フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

Concertgebouw コンセルトヘボウ 2009年8月6日

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Robeco Zomerconcerten 06. Aug. 2009 Concertgebouw

La Sfera Armoniosa

Mike Fentross dir.

Roberta Invernizzi sop.

Sonia Prina alt

座席 1階23列38番

少人数の団体。

曲目はほとんどペルゴレージ(Giovanni Battista Pergolesi, 1710-1736)だった。

 東京からベルリンへ向かう途中だったが経由地のアムステルダムに5日間滞在した。そこで国立美術館、ゴッホ美術館、アムステルダム歴史美術館やレンブラントハウス、アンネ・フランクの家、ハイネケン体験館、王宮、いろんな教会などたくさん観て回ったが、なんとしても行きたかったのがこのコンセルトヘボウである。そのわりに来る前にはその期間何をやっているかなどたいして調べずに来ていた。シーズン中ではないが何かしら公演はあるだろうと思っていたし、コンセルトヘボウということで今回は演奏団体や演目は度外視してでも会場の中にとにかく入りたいという気持ちが強かった。だから(?)泊るところもコンセルトヘボウの一つ裏の通りに宿をとった。地図で見るよりも近く徒歩1分、いや30秒だったか。結局聴きに行ったのは滞在最後の夜になったが、毎日行き帰りには必ずその横・目の前を通ったし、夕方はたいていその真向かいにある大きな公園(その対岸に国立美術館(レンブラントの『夜警』所蔵)があり、中間地点わきにはゴッホ美術館がある)でのんびりしていた。

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 前日の夜に入り口にある掲示板で次の日に公演があるか・何をやるか確認し、大ホールで演奏会があることを確認した(タイトルにもあるように夏の演奏会と称して演奏会は連日行われていた)。当日の昼のうちにチケットを買っておこうと館内の窓口で尋ねたところ夕方、開演前にまた来なさいと、そのほうがはるかに安いからと言われた。正確に覚えていないが約50ユーロのチケットが10ユーロで買えるからと教えてくれた(いわゆる学生券、その後行ったドイツでは学生、というよりは年齢で28歳以下もしくは30歳以下を対象にほとんどの場所でこういった優遇措置がある)。じゃまたあとで来ると言って街を観て回ってから戻って来て10ユーロで手に入れた。上記のように1階のとりわけ良いわけではないが悪くはない。チケットを実際に手に入れたときは嬉しかった。今までなんとなく思い浮かべていたコンセルトヘボウで聴けるなんて。しかもたった10ユーロで。対応した人も私が昼に来た時に50ユーロで売ってしまえばいいものをわざわざ教えてくれたと思うと少し親切に感じた。本人はとりわけ親切のつもりで言ったのではないかもしれないが。

 中へ入るとその雰囲気に気分が盛り上がった。ホールの壁には偉大な作曲家たちの胸像が並び、重厚感を醸し出し歴史の重みを感じるようだった。舞台は、クレンペラーが本の中でカラヤンがカーテンコールで大げさに何度も階段を上り下りした、と語っていたその「階段」があった。聞いてはいたがなんとも不思議な構造。一度出て上の階に上がり外側からそのドアのところにも行ってみた。歩いているとこのホールに所縁のある人物、マーラー、メンゲルベルクなどがいた。メンゲルベルクの名が載っている札を見てみると、Professor Doktor Mengelbergとある。なんとなく笑ってしまった。

 肝心の演奏はそれほど良くはなかった。少人数でそのまま音量も不足がちで、それだけでなく音程もやや不安定で全体に物足りなかった。ソプラノ、アルトの歌声は美しかった。このホールは少し大きめの編成の方が威力を発揮するのかな、などと想像してみる。私が驚いたのはアムステルダムの聴衆についてである。決して演奏自体は上出来とは言えなかったと思うが終演後にほぼ全員が(少なくとも1階は)立ち上がって拍手した。これには驚いた。なんとなく清々しい気分になった。

 出て行くときに地元の大柄なおばあさんに話しかけられた。若い日本人が一人でこんなところにクラシック音楽を聴きに来ていることが珍しかったのだろう(おそらく話しかけてきた時点では日本人と認識はしていなかったと思うが)。彼女は建物の前にある停留所からトラムに乗って帰って行ったのでその間のごくわずかな時間しか会話していないが、旅行した先で地元の人と少しでも会話する機会を持つのは嬉しいものだ。

そうして翌日には、コンセルトヘボウ巡礼の満足感と、アムステルダム4泊5日の観光の思い出と共に1年間滞在することになるベルリンへ向かった。

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