フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

イル・ジャルディーノ・アルモニコ&ジョヴァンニ・アントニーニ&ダニエル・デ・ニース 2010年1月20日 コンツェルトハウス・ベルリン

20. Jan. 2010 Konzerthaus Berlin

Il giardino armonico

Giovanni Antonini

Danielle de Niese

ヘンデル(他2曲だけ別の違う作曲家)

2つのアンコール オンブラ・マイ・フ、アリオダンテより何かのアリア

座席 2階左ロージェ3、5番

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 この日はすごい寒かった。マイナス18℃くらいだったと思う。でも前から行きたくて行きたくて待ちに待った演奏会。イル・ジャルディーノ・アルモニコ&ジョヴァンニ・アントニーニ&ダニエル・デ・ニースによるヘンデルプログラム。この組み合わせなら誰もが行きたくなるだろう。どんなに素晴らしい演奏会になることか。想像しただけで嬉しくなるような組み合わせだ。こういうプログラムでは特に、ベルリン・フィルハーモニーよりコンツェルトハウス・ベルリンの方が良い。音響良し。雰囲気も良し。そしていつも思うことだがベルリンは良いなぁと思う。なぜって、こんな演奏会でも当日まで売り切れにならない。当日に早めに売り場に行けばちゃんと買える。日本での有名オーケストラ・歌劇場の来日公演に見られるような発売日の開始5分間の壮絶なチケット争奪戦など存在しない。ベルリン・フィルでさえ発売初日で売り切れるのはよっぽどの演奏会であり、普通はチケットはそれほどでなくとも多少は残っているし、アンネ・ゾフィー・ムター&ランバート・オーキスのベルリン・フィルハーモニーでの演奏会だって当日行って入れる。

 指揮者も途中でフルートを吹いていた。デ・ニース素晴らしすぎる。イル・ジャルディーノ・アルモニコも本当に素晴らしい。会場全体が感動していた!カーテンコールでは拍手と歓声で会場が揺れていた!こんなの初めて。席はちょうど歌手の横、ちょっと斜め前くらいでとても近いところだった。全員の動きがよく見えて臨場感があった。デ・ニースは前後半で衣装を替えていた。そしてなんといっても白眉は後半の「Da tempeste il legno infranto」。前からデ・ニースが歌うこの曲を聴きたいと思っていたのを聴けた。この曲はダニエル・デ・ニースが2005年にグラインドボーン音楽祭で歌い喝采を浴び、2008年にECHOクラシックの賞を受賞した時にミュンヘンでアルブレヒト・マイアーのオーボエと共に歌った曲だ。しかも今日のオケはイル・ジャルディーノ・アルモニコ。申し分ない。何も言うことない。鳴り響いた瞬間溌剌としたオケの音にやられ、デ・ニースの声にやられ。聴いている間どんどん気分が高揚していき不思議な感覚だった。ウィリアム・クリスティ/レザール・フロリサン伴奏のあのCDも良いことは良いがそんなことを言ってる場合ではない。生で聴いてるのだから当たり前かもしれないけれども。こんなに楽しんだ演奏会は過去に無かったというくらい素晴らしかった。デ・ニースのエネルギーがびりびり伝わってきた。良い演奏はそれなりにたくさん聴いてきたと思うが、こういう感覚になったのはなかなか無い。

 当たり前のことだが良い歌手は声量がある、声が通る。カサロヴァ、コジェナー、ヴァルトラウト・マイアー、ビリャゾン、アラーニャ、ホセ・クーラ、ルネ・パぺ、アンナ・プロハスカ、他にも挙げればたくさん。彼/女らは聴けばすぐその人とわかるほどの自分の声と、声量とそれをコントロールする術を持っている。ダニエル・デ・ニースもその一人だ。上述の曲と対照的な「Lascia ch'io pianga」もどれだけ感動的だったことか。会場全体が息を呑みながら聴いていた。

 アンコールも2曲歌ってくれた。彼女はドイツ語が出いないそうなのでそのことを言おうとして「ごめんなさい、本当は今日ドイツ語で何か言えればよかったのだけれど私英語ができないので」と英語で言うので直後に気付いた本人も聴衆も爆笑。「じゃなくてドイツ語、ドイツ語ね(笑)英語で喋ってるのに!」。2曲目に行くとき「で、次はアリオダンテからのアリアを歌います。えーっとぉ、ヒュイッ!って感じのやつ」。

 この日は公演全体を通して彼女の満ち溢れる生命力を感じた。

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