フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

『ファウスト』第1部 ベルリン・ドイチェス・テアター 2010年1月31日

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2010年1月31日 Goethes Faust Erster Teil

Deutsches Theater Berlin

演出 ミヒャエル・タールハイマー(Michael Thalheimer)

休憩なし 1時間45分

座席 1階13列12番

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(写真は12月。当日はもっと雪が積もっていた。この写真はこれでも14時半頃。暗い。。。この劇場は場所が分かりにくい。初めて探したときは迷った。) 

 

 売り切れだった。寒い雪道を歩いてきたのに。あると思っていたがまあ仕方ないかとキャンセル待ちで並んでいると、一枚余りを持っている男性に声を掛けられ20ユーロで手に入れる。一階13列12番。良い席だったが目の前の女性が大きく舞台真ん中が見えにくいという。ちなみにキャンセル待ちには数名並んでいた。この日のほぼ同じ時間にはここの小劇場でハイナー・ミュラーの『ハムレット・マシーン』を上演していて数日前までどちらに行くか悩んでいたがタールハイマー演出の『ファウスト』は観たかったのと、ちんぷんかんぷんで終わるよりは今日はちゃんと楽しみたいという気持ちもあった。

 タールハイマーの『ファウスト』第1部はファウスト、メフィスト、グレートヒェンの3人に焦点が絞られ、せりふの省略が多い。作品自体が第2部よりも短いものの、それでもそれ自体短くはない第1部が2時間足らずに省略されている。冒頭部分はカットされていていきなりファウストの独白部分。ファウストは登場して約3分間横を向いたまま黙って立っている。グレートヒェンは『あなた、神様を信じているの』(3426行)とファウストに何度も何度も(6回とのこと)問いただす。最初はかわいいグレートヒェンに丁寧に答えていたファウストだがだんだんいらいらして早口で、最後にはもうカッとなってまくしたてる。ここは少し笑えた。

 このタールハイマーの演出については2009年6月に中央大学でバイアーデルファー(Hans-Peter Bayerdörfer)教授の行った講演を聴いた際に触れて、第1部・2部を原作の台本通りすべて上演するというペーター・シュタインの演出と比較しながら取り上げられていたので印象に残っていた。タールハイマーの演出では、作品の極端な濃縮とミニマリズム美学、登場人物の心理描写よりも美学的に重要な瞬間を強調するという点が演出上の特徴となっているとのことだったが、実際に観て合点がいった。 台詞はテンポが速く人工的なせりふ回しになっている。

 ただ演出に対する観客の反応は良くなかったように見えた。むしろ、普通にやってくれよ的な空気さえも感じた。演出として話題性といった観点からは面白いのかもしれないが実際に観た印象では、観客に訴えてくるものが足りないように感じた。観終わった後も満足感がない。

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