フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

オッフェンバック 『ラ・ペリコル』 2010年6月9日 コーミッシェ・オーパー

2010年6月9日(水)La Périchole

Komische Oper

Opéra-nouffe von Jacques Offenbach

Dirigent  Markus Poschner

Inszenierung  Nicolas Stemann

Périchole  Karolina Gumos

Piquillo  Johannes Chum

Don Andrès, (Vizekönig von Peru)  Roger Smeets

ドイツ語上演 

1階2列右14番(ほぼ中央)

 今日は舞台の関係で、1列目を覆う形でその上に道が作られていたので2列目が今日の最前列、近すぎるってくらい。やっぱり近いのは良い。

 オッフェンバックの『ラ・ペリコル』(ラ・ペリコールと表記されることもある(というかそれが主流?)がフランス語での発音としてはラ・リコル)。このオペラはかなり珍しい部類に入ると思う。コーミッシェ・オーパーの月間公演プログラムを眺めていて見つけるまで知らなかった。でも『ホフマン物語』が好きなので結構期待していた。

 ひとつ補足的なこと。ここコーミッシェ・オーパーでは外国語作品も基本的にすべてドイツ語で上演される。最初はそれがちょっとなぁとか思っていたが、まあ元々ドイツ語のものは問題ないし、例えばフランス語のものでも翻訳されて歌われてそれはそれで面白いし、上手くいっているところもあるしないところもあるし、いずれにせよ発見がある。

 いやぁ面白かったな。演出が。始まる前隣のおばさんと話したところ、プレミエの時の批評で演出についてけっこう悪く書かれたらしくそんなに客も来ないでしょうと言っていたが、どうだろう。そんなに後ろに振り向かなかったからわからないけど、まあそれなり、やや少ないくらいだったかな。いいなコーミッシェオーパー。最近なんか好きになってきた。ぱっと来て千円で最前列で観られるし雰囲気も良いしレヴェルも特別高くはないけどまあうるさいこと言わなければいいくらいだし。今日の舞台と出演者の顔についてはプログラムの写真通り。新制作だからか一致している。王様がうける。マイクで度々解説に出てくる二人もうける。冒頭で、よく有名歌手がキャンセルした時に舞台で挨拶・お詫びをするように、「ええ、こんばんは。こうやって出てくるときはいつも決して良いことではないものです。でもすべてOK、問題いなし。お楽しみください。」

 ソプラノきれい。あの赤い旗持った奴はプログラムに載ってる「古い投獄者」か。多分台本にはないんだろうな。1871年の共産主義者か。ソプラノは後ろの方で聴いたらどうなんだろう、ちょっと声が小さいかな。見栄えも良いし歌もまあまあだと思うけど。やっぱり前で聴くっていいな。そんな超有名歌手じゃなくても近くで聴くといいね。重唱のハーモニーの響きとか。

  Der alte Gefangene „ Arbeiter, die große Schlacht, seid klug, steht auf,(...).“(「年老いた囚人、労働者よ、大いなる闘いだ、賢明であれ、立ち上がれ」) これをあの赤い旗を持った奴がところどころで叫ぶ。

 2幕冒頭のせりふも面白かったな。今そこで起こっていたことは紛れもない真実でいかなる補足的な幻想でもない、だっけなそんなようなこと。„Verstehen Sie? Verstehen Sie, was ich meine? (笑)(「わかってますか?、私が言いたいことを本当にわかってますか?」)こういうのはなんとなくわかるような感じでちょっとまじめすぎ・大げさだろって所の差が面白い。ドイツ語っていうもあるな。大げさなところが面白い。そういう単語がしっかり自分の言語の中に埋め込まれてるからだろうな。日本語でそういう言葉が出てきても宙に浮いたというか、疎遠な感じがしてしまう。 あの3人組途中でちょっと飽きちゃった。冒頭の曲は、そして途中でもまた流れたのは、トリスタンとイゾルデだよね。

 3幕、幕が上がったらオケが舞台の奥にいた。

Oh mein Gott, wie sind die Männer dämlich.(「あぁ、男たちはなんてまぬけなのでしょう!」)そんなに繰り返さなくても。盛り上がってこのフレーズを繰り返し歌い続ける。歌手がみんな前に出てきて客にまで歌わせるという。

 今日はとても面白かったけど、本来の曲はどのくらいちゃんと演奏されただろうか。もしかしたら半分くらいしかちゃんとやってないんじゃないか?もはや音楽ところどころ付きの演劇になってたな。面白かったからいいけど、ラ・ペリコルの音楽はあまり残っていないという。

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