フィルハルモニ記

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Goehtes Gedanken über Musik(3)『後宮からの誘拐』について

Goehtes Gedanken über Musik, 1985, Insel Verlag. 『ゲーテの音楽思想』

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 ゲーテがモーツァルトを高く評価していたことは有名ですが、今回は『後宮からの誘拐』(Die Entführung aus dem Serail)についてのゲーテの言葉を紹介します。


「最近モーツァルト作曲の『後宮からの誘拐』が上演された。誰もが音楽については賛同の意を示した。1回目はそれなりに演奏されたが、台本自体がとても悪かったし、音楽の方も私にはどうしても入ってこなかった。2回目は上手く演奏されず、私は外へ出て行った。しかし、作品は自らを保ち、皆が音楽を褒め称えた。5回目に上演されたとき、私は再び中へ入った。演技も歌もどの回よりも良かった。私は台本を度外視した、そうすると今は自分の判断と聴衆への印象との差異を把握して、どいういうことかが分かる。」(p. 183)
1785年12月22日、P. C. カイザーへ


 ゲーテはイタリアで[作曲家の]カイザーと共にオペレッタ制作の実現に向けて集中的に作業を進めていました。その労について後になって語った言葉です。


「そうして、モーツァルトが現れたとき、自らを簡単なもの制限されたものの中に押し込めた私たちの労すべてが水の泡となった。『後宮からの逃走』はすべてを鎮め打ち倒した。劇場では私たちが入念に進めてきた作品は決して話題に上ることはなかったのであった」(p. 184)
1787年11月、『イタリア紀行』


 『後宮からの誘拐』を私はベルリンにいたときに初めて観ましたが、まったく素晴らしい音楽ですね。一度聴いたら忘れられないような。コーミッシェ・オーパーで観て演出が非常に過激なものだったのですが、音楽はそれでも入ってきましたね。ゲーテが言うように、おそらく同時代のそこらへんのオペラに比べたら雲泥の差だったことでしょう。それにしても同時代人の当時の言葉は面白いです。しかもそれがゲーテともなるとまた重みが違いますし。そして言及対象がモーツァルトという。楽しすぎる。ゲーテはモーツァルトやベートーヴェンとは面識がありましたからね。

Goethes Gedanken ueber Musik

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