フィルハルモニ記

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Goehtes Gedanken über Musik(5)モーツァルト

Goehtes Gedanken über Musik, 1985, Insel Verlag. 『ゲーテの音楽思想』

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 前回に引き続きモーツァルトについてゲーテが述べた言葉を紹介します。


「芸術家を偉大で独特にするもの、それを芸術家は自らの中からだけ創造することができる。ラファエル、ミケランジェロ、ハイドン、モーツァルトなどすべての卓越した巨匠たちがその不滅の創造物をいったいどんな先生に負っているというのか?」(p. 189)
1821年11月、クリスティアン・ローベに向かって

 

 ゲーテらしい言葉ですね。『ゲーテ格言集』(新潮文庫)というのがあってそこからもゲーテのこうした姿勢がうかがえます。世界史上最高の文豪(少なくとも私にとっては)だけあって含蓄のある言葉がたくさんあります。

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

ゲーテ格言集 (新潮文庫)

 

  

 続いてはゲーテの『ファウスト』に関連してのものです。
 

 「しかし私はファウストに相応しい音楽が付くのを見るという希望を捨てていません」と私(エッカーマン)は言いました。

 「それはまったく不可能だ」とゲーテは言いました。「嫌悪感を起こさせるもの、不快なもの、恐ろしいものといった、相応しい音楽がところどころに含んでいなければならないものは時代に反している。音楽というのは『ドン・ファン(Don Juan)』的な特性においてなければならない。モーツァルトがファウストを作曲しなければならなかったのだが。マイアーベーア*1はもしかしたら作曲できるかもしれないが、彼はそういったもの*2には入り込んでは行かないだろう。彼はあまりにもイタリア劇場との結びつきが強いからだ」(p. 185)
1829年2月12日、『エッカーマンとの対話』

 

*1Giacomo Meyerbeer, 1791-1864, ドイツの作曲家

*2上述されている嫌悪、不快、恐怖のこと


 

 モーツァルトを評する際によくデモーニッシュ(dämonisch:悪魔的な、魔力・超自然力のある cf. Dämon)という言葉が使われますが、ゲーテもここでまさにその点に触れています。モーツァルトがオペラ『ファウスト』を作曲していたらどんな作品だったでしょうか。グノーの作品などは埋もれてしまう程のものになったであろうことは容易に想像(期待?)できます、とモーツァルト好きの私は勝手なことを言いますが。

 

Goethes Gedanken ueber Musik

Goethes Gedanken ueber Musik

 

 

 

 

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