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フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

シェイクスピア 『ヘンリー6世』

シェイクスピア 『ヘンリー6世』 全3部 シェイクスピア全集19 松岡和子訳 ちくま文庫 (2009)

 「百年戦争とそれに続く薔薇戦争により疲弊したイングランドで、歴史に翻弄される王ヘンリー六世と王を取り巻く人々を描く長編史劇三部作。敵国フランスを救う魔女ジャンヌ・ダルク、謀略に次ぐ謀略、幾度とない敵味方の寝返り、王妃の不貞―王位をめぐる戦いで、策略に満ちた人々は悪事かぎりをつくし、王侯貴族から庶民までが血で血を洗う骨肉の争いを繰り広げる。解説 河合祥一郎」(本書裏表紙より)

 ふぅー。『ヘンリー6世』やっと読み終わった。

 約600ページもある長大な戯曲。彼の他の戯曲3作分の分量だ。内容的には、初期の作品ということもあって、3作分とはいかないが。前半にジャンヌ・ダルクが出てきたことなどは遠の昔。やっぱり2部以降、後半が面白い。作品全3部全体としてはやっぱり長すぎて、シェイクスピア作品だからなにがなんでも読む!というくらいの気概がある人じゃないとなかなか読めないのでは。百年戦争に続くばら戦争ではランカスター家(赤薔薇)とヨーク家(白薔薇)の対立の中で色々な登場人物が出てきて苦労する。2009年10月~11月に新国立劇場で全3部一挙に上演されたとき、観に行くことはできなかったが、もしこの『ヘンリー6世』の上演をまっさらな状態で観に行っていたら登場人物が把握できず迷子になるに違いなかっただろう。

 大まかな対立の構図把握のために、巻末に両家の関係図が載せてある。また史実を参照できるよう『ヘンリー6世』関連年表もついている。これらは訳者が翻訳の際に作成したものらしい。この翻訳についての苦労話が訳者あとがきに書いてあるが、やはり他のシェイクスピア作品よりも相当に苦労したようだ。

 1590年頃作。ロンドンに出てきた当時26歳のシェイクスピアが書いた最初の戯曲とされる。中にはすでにシェイクスピアらしい美しく、機知に富んだセリフが多くみられる。最初に印象に残ったのは第1幕の第1場でヘンリー5世(6世の父)の話が出てきた後使者がやってきて、フランスでの敗北を知らせた時にグロスターが言ったセリフ。

「パリが落ちたのか?ルーアンもか?

たとえヘンリーが今よみがえったとしても、

この知らせを聞けば再び息絶えるだろう。」

かっこいい…。他にも全体に両家のバラにちなんだ言い回しがたくさん出てきます。あと、『リア王』に出てくる、

「王冠は心の中にある」

とか、『ロメオとジュリエット』に出てくる

「私の胸があなたの鞘」

といった名セリフがすでにこの『ヘンリー6世』に現れていたとは。新たな発見。

henrydersechste.jpg

ヘンリー六世 全三部

ウィリアム・シェイクスピア著

松岡和子訳

ちくま文庫

シェイクスピア全集 19(ちくま文庫 し 10-19)

2009年


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