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フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

『ゲーテとベートーヴェン』 青木やよひ著

青木やよひ『ゲーテとベートーヴェン―巨匠たちの知られざる友情』(2004年、平凡社新書)

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 以前からこの2人の関係や出会いについて興味があってこの本の存在も知っていたが、今まで読まずにいたところ今日ひとまず読み通した。非常に興味深く楽しく読んだ。2人を取り巻く様々な人物についても紹介され、発言や会話の記録などが多く挙げられていて臨場感がある。後世に両者の不仲説が定着してしまった要因などに触れながら一般には知られざる2人の関係を資料を辿りながら解説してくれる。

 私はベートーヴェンの書簡選集の文庫本と、ゲーテの音楽に関する言葉を集めた本を持っていてこのブログでも以前に紹介した(→「Beethoven Briefe(1)」、「Goethes Gedanken über Musik ゲーテの音楽思想」)。それらの中にベートーヴェンのゲーテ宛の手紙が載っていて、本書『ゲーテとベートーヴェン』でも紹介されている。その手紙だけを読んでいたときにはベートーヴェンが、相手がゲーテとはいえあまりにもへりくだった文を書いているので少し奇妙だと思っていた。ゲーテはベートーヴェンにとってもそれほどの尊敬の対象であったと、ただ単純に考えていた。それが本書を読み2人に起こったことの経緯を知ることでより深く理解できるようになったと感じる。 

 同じ青木やよひの、不滅の恋人=イニシャルAの女性の謎を追った『ベートーヴェン <不滅の恋人>の謎を解く』(2001年、講談社現代新書)も推理小説を読んでいるような緊迫感があり面白い。本書の場合はそういった緊迫感はないが資料として貴重であり様々な人物が登場するので読んでいて楽しい(少年メンデルスゾーンも登場する)。いずれにせよ両者に共通するのはベートーヴェンの、ゲーテのそしてその両者の関係の真の姿に迫りたい、それを世に伝えたいという気迫、情熱によって支えられているということである。あのベッティーナ・ブレンターノが両巨匠を是が非でも引き合わせたいと願ったように。そうした情熱が、資料が限られている以上憶測の域を出ない事柄がいくつかあるにもかかわらず、読み手を楽しませている。この2人の行動などがこれだけ詳細に分かること自体が驚きで、多少の推測を要する箇所があってもそれがむしろ想像力をかき立て心地よい。

 読み終えて、「詩と音楽の二つの星の、千年に一度の出会い」とロマン・ロランが形容したという(p.132)世界史上稀有のこの2人とは、人は生涯をかけて付き合うのだと感じる。

 

ゲーテとベートーヴェン―巨匠たちの知られざる友情 (平凡社新書)

ゲーテとベートーヴェン―巨匠たちの知られざる友情 (平凡社新書)

 

 

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