フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

アリベルト・ライマン『リア』(日本初演) 2013年11月9日 日生劇場

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アリベルト・ライマン『リア』(日本初演、11月8日-10日)

2013年11月9日14時開演 日生劇場
二期会
演出:栗山民也
指揮:下野竜也
読売日本交響楽団

座席 2階H列31番

 この公演に先立って11月4日月曜日に行われた作曲家アリベルト・ライマンの講演会に行ってきた。本人の色々な話と彼の歌曲をいくつか聴くことができ、このオペラへの期待も高まっていた。

 オペラ『リア』の世界初演は1978年。講演会でライマンはこのオペラの作曲の経緯について面白い話をしてくれた。ライマンはもともと伴奏者としてフィッシャー=ディースカウと親交があった。そのディースカウが「シェイクスピアの『リア王』を歌うのが夢だ。作曲してくれないか」とオペラ化の話を持ちかけてきたそうだ。ライマンは悩んだ末に作曲することにしたのだが、「後から聞いた話では、彼は同じ話をブリテンにも持ちかけていたらしい(笑)」とのこと。 

 今回の『リア』は二期会創立60周年記念、日生劇場開場50周年記念、読売日本交響楽団創立50周年記念と記念尽くしの公演だった。これだけのプロダクションをやり遂げたこと、素晴らしい。意欲の高さからすれば、今回の『リア』は2013年最高の上演と言っても良いかもしれない。チケットを買うときは半信半疑でとりあえず観ておこう、といった感じであったが本当に観て良かったと思う。ちなみに、初日の上演、正真正銘の日本初演は陛下御臨席だったとのこと。

 音楽は密度が濃く、緊張感があり最後まで引き込まれた。演出も良かった。いかにも演劇人が作ったという感じはするのだが、左右にオーケストラの一部が配置され狭くなった舞台を非常に効果的に使っていた。照明の使い方なども巧妙で、冒頭、権力者たちが集う場面など『ラインの黄金』をやっているかのような迫力のある舞台だった。色の使い方も印象的だった。オーケストラや歌手について言い出せばきりがないだろうが良くやっていたと言うべきだろう。総合的にとても良かった。とても満足のいく公演だった。最後の場面、ゴネリルもリーガンもすでに息絶えたところへリアがコーディリアの亡骸を引きずって現れる瞬間はまさに悲劇。最後の最後に結局感じたことはシェイクスピアの戯曲の良さだ。ヴェルディが『リア王』をオペラ化していたらどうだったか、もしくはしてほしかったと思うわけだが、これを観ればそうしたことももう考えなくなるだろう。アリベルト・ライマン『リア』、日本での再演はいつになるであろうか。新国でもぜひ上演してほしい。

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