フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

ウィーン・フィル バレンボイム指揮 2014年11月1日 ウィーン楽友協会

WPh barenboim

Wiener Philharmoniker

Dirigent: Daniel Barenboim

Flöte: Karl-Heinz Schütz

Programm

Pierre Boulez

Livre pour cordes [Fassung für Streichorchester]

Mémoriale (---explosante-fixe---originel), 1985

Originel

Franz Schubert

Symphonie Nr. 8 in C-Dur, D944 ("Große C-Dur")

zum "Originel" von Pierre Boulez:

Klangregie und Live – Elektronik: Christina Bauer und Noid Haberl, entwickelt und realisiert durch IRCAM (Institut de Recherche et Coordination Acoustique/Musique)

後半 6, 8, 10, 12, 14(多分、Cbとチェロは確実)

座席 右Balkon-Loge 7 3列2番

 今週の土日は定期演奏会なので今週に入ってから売り場に行ってチケットを手に入れた。バレンボイム指揮、ウィーン・フィル、シューベルト交響曲第8番大ハ長調、ウィーン楽友協会大ホール、といってもチケットは少し選べる程度にあって割と簡単に手に入る。立ち見席が(Podium席も)あるが、ここの立ち見には行きたくない。

 ウィーン・フィルを(オペラでなく演奏会で)聴くのは2回目。初めてのウィーン・フィルは約4年半前にベルリン・フィルハーモニーで聴いた(記事→「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 2010年2月12日 ベルリン・フィルハーモニー」)。指揮はロリン・マゼールだった。今年の7月に亡くなったので最初で最後となった。

 バレンボイムはベルリン国立歌劇場の音楽監督なのでベルリンにいたときに、国立歌劇場管弦楽団でもベルリン・フィルでも聴いた。数年後に巡り巡ってウィーンでバレンボイムの指揮でウィーン・フィルを聴くとことになるとは。

 前半のブーレーズは会場の誰も良く分かってはいないのだがみんななんとなく聴いている。なんとも変な光景だ。こんな奇妙な音楽をこんな伝統的な美しいホールで、普段から音楽を聴いてそうな人も聴いてなさそうな人も、オーストリア人他ヨーロッパ人も割と多く来ている日本人他アジア人たちもがおとなしく席に座って聴いている。3曲目を始める前にバレンボイムが客席を向いて、2言だけ、といってなにやら曲の説明をし始めた。こっちのフルートソロとアンサンブルはこうで、こっちのフルートソロとアンサンブルはその陰でスピーカーがどうのこうのと。もごもごとしてて、声があまり大きくないのできちんと聞き取れなかったが、どうせ舞台半分以上見えないしな、と思いつつ音楽に耳を傾ける。

 後半のシューベルトが今日のみんなの目的のはず。大ハ長調。冒頭のホルンの最後の音が、ふにゃーとなり一瞬ガクッとなったがそういう細かいことはいいだろう。オケ全体の響き、特に弦、が夢のような美しさ。これを待っていた。やはりオーケストラピットではなく舞台に上がる演奏会となると違うのか。よく形容されるように、絹のように柔らかく艶がある音。この美しさにはホールも影響している。ウィーン楽友協会大ホールに響き渡るからこそ、という面がある。ベルリン・フィルハーモニーで聴いた時ももちろん格別に美しかった。だが今日の響きこそが所謂「ウィーン・フィルの響き」なのだろう。ベルリン・フィルハーモニーとウィーン楽友協会のホールはあまりにも違いすぎる。仮にまったく同じ演奏だとしても(当然だが)違って響くし、そもそもあまりにもホールの違いが大きいので編成も含め同じように演奏しないであろう。実際にベルリン・フィルハーモニーで聴いた時にはベートーヴェンの田園で弦がコントラバスから8, 10, 12, 14, 16名。今日のシューベルト第8番大ハ長調より2名ずつ多くして、かつあの広い空間に響き渡るよう思いっきり弾いていた。同じように演奏しない、すなわち極端に言えば余所行きの演奏だ。ウィーン・フィルが演奏しているのだからウィーン・フィルの響きには違いないが、所謂「ウィーン・フィルの響き」とは楽友協会での演奏でこそ聴けるものだ、と今日身をもって体験した。豊かな残響で音が混じり合い、あたかも天へと昇っていくかのような響き。天国的な長さを持つこの交響曲を聴くにこれ以上相応しいオケとホールはないと思わせる。

 バレンボイムは熱烈な拍手と歓声を浴びていた。テンポは全体に遅く、じっくり進む。細部のテンポ感、個々のパートの聴かせ方はやはりピアニストのそれだ。

 1回目のウィーン・フィル体験も大きな体験だったが、今日の2回目も1回目に劣らない大きな体験となった。

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