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フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

「スーパーグローバル大学」選定に関する誤解あるいは認識不足―事業の全体像について

 この秋(2014年9月26日)に「スーパーグローバル大学創成支援」の採択結果が公表された。巷ではどの大学が選定され、落選したかが話題になっている。それはいいのだが一部、事実を誤認した報じ方、論じ方、正確に言うと事業全体を知らないことからくる誤解や偏向が入り込んでいる論や意見が散見され、またこの事業(を含む事業)の全体に触れている記事や意見がほとんど見られない。そこで不正確、不十分な情報が広まって不正確な意見が形成されてしまわないように、この件に関して少し書くことにした。ここでは事業そのものの是非については論じないが、ここで指摘すること(報じる人間がこれほどまでに不勉強でなければ指摘するまでもないはずのことだが)は、この事業の是非を論じる際に重要だろう。なぜなら、ある大きな事業の是非やその影響を論じるのであればその片側だけでなく、両側を知っているべきだからである。片側しか知らずに断定的に論じるのはどう考えても不当であり、正確さに欠け、当人にとって良くないのみならず、他人にとって害である。ここで指摘したいことの要点は次の通りである。

1.「スーパーグローバル大学」は「スーパーグローバル大学創成支援」という事業で選定されたが、この事業は日本学術振興会の「スーパーグローバル大学等事業」に属する。

2.学振のこの「スーパーグローバル大学等事業」は上記の「スーパーグローバル大学創成支援」と、2年前に採択結果が公表された「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援」の2つの「支援」からなる。

3.それぞれタイプAとタイプBを持ち、「スーパーグローバル大学創成支援」では「トップ型」と「グロ-バル化牽引型」、「グローバル人材育成支援」では「全学推進型」と「特色型」と呼ばれる。

4.同じ「支援」内でAとBタイプの両方に採択されることはないが、双方の「支援」Aに選ばれている大学、片方でA、もう片方でBに採択されている大学、どちらかのAもしくはBに採択されている大学がある。さらに、申請はしたが採択されなかった大学、そしてそもそも申請しなかった大学がある(日本の大学の総数からすれば申請していない大学の方が圧倒的に多い)。

5.何々大学が「スーパーグローバル大学」に選定されたと騒いでいるが、厳密に言えば、というよりただ冷静に見さえすればこれは間違いである。「スーパーグローバル大学創成支援」対象として採択されたのであって、(当たり前なのだが)現時点ですでにそのような大学であるわけではない。その潜在能力と可能性と計画が評価されていることは間違いないが、「スーパーグローバル」という日本人がよく反応しそうな言葉に見事に引きずられすぎである。

6.給付額を見るとその額は実は、少なくはないが、所々で論じられているような格差・序列・明暗がこの給付額によってのみ鮮烈に生まれてしまうような巨額ではない。

7.にもかかわらず、そのような格差・序列・明暗が今後生じてしまうという論が現実のものになりうるとすれば、その論が、誤っている、偏っていることによってであり、それにより「スーパーグローバル大学」という言葉に引きずられる傾向が助長されることによってであろう。不正確、不十分な情報によって、不正確、不十分な認識が全体として形成されることによってであろう(「みんなそうしてるから。みんなそう言ってるから」という日本人の間によく起きやすい現象である。不正確であろうが広まっ(てしまっ)た情報が結局現実を動かす)。

8.それはある特定の大学の不利益云々ではなく、日本全体の損失である(何々大学の何々学部何学科でやりたいことがあるのに、別の「スーパーグローバル」大学のまったく方向の違う学部を知名度で選ぶ、本当は能力がある/ないのに何々大学だからということで実際の能力よりも過少/過大に扱う・扱われる等)。

9.今後学生になる者たちが「スーパーグローバル大学創成支援」の恩恵を受けるとすれば、その大学に進学し、かつその支援によって展開されているプログラム、プロジェクト等に積極的に参与するときである。特にそういったものに関わらず、増えるであろう留学生ともたいして交流しないのであればあってもなくても直接的には同じことである。

10.にもかかわらず、特に何も考えないまま知名度や、「スーパーグローバル大学創成支援」に選定された大学だからという理由だけで大学を選んだりすることが、依然として結局得になるような社会であり続けるとすれば、主に7.と同様の理由によってであろう。

11.上記のどの点にもかかわらず、どの大学が採択されようとも、外国へ人材を派遣し、外国から人材を受け入れる等の取り組み自体は広く推進されていくべきである。次に出てくるであろう事業での採択に向けて各大学がさらに努力を重ねて競争することで全体がより良くなっていくであろう。

1と2の点について。事業の構造

 この「スーパーグローバル大学」というのは、文部科学省所管の独立行政法人日本学術振興会による「スーパーグローバル大学創成支援」という事業で選定された大学を指している。そしてこの事業は「スーパーグローバル大学等事業」の一環である。知られていないのは学術振興会のこの「スーパーグローバル大学等事業」は以下の2つの「支援」からなる、ということである。

「スーパーグローバル大学等事業」(→http://www.jsps.go.jp/j-sgu_ggj/index.html

  ・スーパーグローバル大学創成支援(最大10年)

Aタイプ:トップ型(年4.2億)10件程度

Bタイプ:グローバル牽引型(年1.72億円)20件程度

  ・経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援(最大5年)

Aタイプ:全学推進型(年2.6~1.4億円)10件程度

Bタイプ:特色型(年1.2億円)30件程度

 ここ最近騒がれている「スーパーグローバル大学創成支援」に先駆けて「グローバル人材育成支援」の公募が出され、採択結果が2012年9月24日に出ている(2013年度までは「グローバル人材育成推進事業」という呼称だった)。この「グローバル人材育成支援」があまりに知られていないのだ。少し調べれば簡単に知ることができる。「スーパーグローバル大学創成支援」情報を詳しく知るために学術振興会の関連ページを開けば「グローバル人材育成支援」もすぐ目に入るはずだ。これら2つの「支援」は両方とも「スーパーグローバル大学等事業」に含まれ、論じる際には双方に触れる必要があるだろう。それにもかかわらず、「グローバル人材育成支援」の方まったくに触れずに(というより存在しないかのように)論を展開している記事も多い(知らないからであろう)。例えば、「東大法学部、志願者減で異変?中央大、青学、首都大は郊外移転で没落か」(Business Journal、2014年10月24日)(←これは年間給付額の記述も間違っている)、「大学、「18年問題」と一部重点支援で淘汰加速 同志社・中央ら選定漏れ、名門も廃校」(Business Journal、2014年11月26日)、「<大学の国際化(下)>有力大「MARCH」「関関同立」、グループ内で明暗―「ランキング至上主義」に弊害も」(Record China、2014年12月16日。←この記事内の「スーパーグローバル大学」という呼称は適切と言える)であり、いずれも2つ目の「グローバル人材育成支援」には触れていない、というよりも存在を認識してすらいないだろう。なぜなら、例えば以下のことを知っていれば上記のような論、論調にはならないであろうからである。

• 上記の記事で「選定漏れ」の大学として名が挙がっている同志社大学、中央大学は「グローバル人材育成支援」のしかもAタイプ「全学推進型」に採択されている。毎年の給付額は(期間の差はあるが)「スーパーグローバル大学創成支援」のAタイプよりは少ないが、そのBタイプよりは多い(下記「3と4の点について」参照)。

• 上記2つ目と3つ目の記事で「スーパーグローバル大学創成支援」に採択されなかった大学として他に名が挙がっている一橋大学、神戸大学は「グローバル人材育成支援」のBタイプに採択されている(他に名の挙がっている首都大学と青山学院大学は「スーパーグローバル大学創成支援」と「グローバル人材育成支援」のどちらにも採択されなかった)。

• 「スーパーグローバル大学創成支援」で採択された大学でも「グローバル人材育成支援」では採択されていなかった大学もある。

 上記の記事やそれに基づいたネット上の意見がいかに不正確で不十分かがわかるだろう。何々大学「選定漏れ」と見出しをつけたり、「グループ内で明暗」などと論じても全体を把握していないので説得力がない。「スーパーグローバル大学創成支援」については他ブログの記事「[News] スーパーグローバル大学とは何か 〜選考基準、疑問点、今後の展望〜」(個別指導講師の学習教材レビュー、2014年9月30日)が冷静に解説しているので参照されたい。

3と4の点について。2つの「支援」の中身と申請・採択大学

・「グローバル人材育成支援」(→http://www.jsps.go.jp/j-gjinzai/gaiyou.html

 タイプA:全学推進型に41大学の申請、タイプB特色型には111大学の申請があり、合計129大学から152の申請があった。

年間補助金額(最大5年間)

タイプA:全学推進型

入学定員 ※大学院の入学定員を含まない

 2千人以上 2.6億円

 1千人~2千人未満 2.2億円

 5百人~1千人未満 1.8億円

 5百人未満 1.4億円

タイプB:特色型 1.2億円

目的:

「グローバル人材育成推進事業は、若い世代の「内向き志向」を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国の絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる「人財」の育成を図るため、大学教育のグローバル化を推進する取組を行う事業に対して、重点的に財政支援することを目的としています」

対象:

「本事業は、「グローバル人材育成推進会議 中間まとめ」によるグローバル人材としての三要素

Ⅰ:語学力・コミュニケーション能力

Ⅱ:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感

Ⅲ:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

に加え、これからの社会の中核を支える人材に共通して求められる、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークとリーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等の能力の育成を目指し、大学教育のグローバル化を推進する取組を対象とします」

図1.(グローバル人材育成推進事業申請状況)

人材申請1

人材申請2

人材申請3

人材申請4

「平成24年度グローバル人材育成推進事業申請状況.PDF(http://www.jsps.go.jp/j-gjinzai/data/download/h24_shinseijoukyou.pdf)」

図2.(グローバル人材育成推進事業審査結果)

人材申請採択

人材申請採択2

「平成24年度グローバル人材育成推進事業審査結果(http://www.jsps.go.jp/j-gjinzai/data/shinsa/h24/H24_gjinzai_kekka.pdf)」

*タイプB:特色型はタイプA:全学推進型と異なり、学部等の単位での取り組みであり大学全体を覆う影響は無いか少ない。

・「スーパーグローバル大学創成支援」(→http://www.jsps.go.jp/j-sgu/gaiyou.html

タイプA:トップ型に16大学が申請、タイプB:グローバル牽引型には93大学が申請があり、合計104大学から109の申請があった。

年間補助金額(最大10年)

Aタイプ:トップ型 4.2億(最大5億円)

Bタイプ:グローバル牽引型 1.72億円(最大3億~2億円)

目的:

「本事業は、「大学改革」と「国際化」を断行し、国際通用性、ひいては国際競争力の強化に取り組む大学の教育環境の整備支援を目的としています」

対象:

○ タイプA:トップ型

「世界大学ランキングトップ100を目指す力のある、世界レベルの教育研究を行うトップ大学を対象とします」

○ タイプB:グローバル化牽引型

「これまでの実績を基に更に先導的試行に挑戦し、我が国の社会のグローバル化を牽引する大学を対象とします」

図3.(スーパーグローバル大学創成支援申請状況)

大学申請1

大学申請2

大学申請3

大学申請4

大学申請5

大学申請6

「平成26年度スーパーグローバル大学創成支援申請状況(http://www.jsps.go.jp/j-sgu/data/download/h26_sgu_shinseijoukyou.pdf)」

図4.(スーパーグローバル大学創成支援審査結果)

大学採択1

大学採択2

大学採択3

「平成26年度スーパーグローバル大学創成支援審査結果(http://www.jsps.go.jp/j-sgu/data/shinsa/h26/h26_sgu_kekka.pdf)」

 話題になっていそうな点にも着目しつついくつか補足説明を記す。

「グローバル人材育成支援」の申請大学一覧(図1.)と採択結果表(図2.)を見れば、例えば「スーパーグローバル大学創成支援」で採択された大学のうち東京大学、京都大学、大阪大学、名古屋大学、慶應義塾大学、東京外国語大学、明治大学などはタイプA:全学推進型に申請していたが不採択になっているのがわかる(明治大学はB:特色型にも申請していたがそれも不採択)。

• 筑波大学、一橋大学、九州大学はAとBの両方に申請してAは不採択になりBで採択されている。他のBで採択されている大半はAに申請せずBだけに申請している。

• Bだけに申請して不採択だった大学には首都大学、学習院大学、青山学院大学等がある。

• AとBの両方に申請して両方とも不採択だった大学には、名古屋大学、横浜国立大学、岡山大学、広島大学、明治大学等がある。

「スーパーグローバル大学創成支援」のタイプA:トップ型には応募が非常に少ない。それはその「目的」と「対象」に関係していると考えられる(*本記事最後にある補足の項参照)。

• そのAに申請した大学は16大学で、3大学(東京農工大学、熊本大学、首都大学)が不採択だった。その中のB:牽引型も併せて申請していた熊本大学と首都大学のうち熊本大学はBで採択された(首都大学はAとBに申請したが両方とも不採択だった)。

• 「グローバル人材育成支援」のタイプA:全学推進型で採択された11大学のうち「スーパーグローバル大学創成支援」で不採択だったのは、お茶の水大学、同志社大学、中央大学の3大学、Bで採択されたのは、千葉大学、国際教養大学、国際基督教大学、関西学院大学、立命館アジア太平洋大学の5大学である。

• 総合的に見たとき、採択されたされないという点で特筆すべきことがあるとすれば「グローバル人材育成支援」と「スーパーグローバル大学創成支援」の両方に、しかも両方ともAタイプで採択された大学であろうが、それは北海道大学、東北大学、早稲田大学である。

 先にも挙げたが、「スーパーグローバル大学創成支援」について他ブログの記事「[News] スーパーグローバル大学とは何か 〜選考基準、疑問点、今後の展望〜」(個別指導講師の学習教材レビュー、2014年9月30日)が冷静に解説しているので参照されたい。

5の点について。(過大)評価

 補助金を使って実際に良い成果を上げることが本当の問題である。この補助金があってもなくても良い成果を上げているのであればその大学は高い評価を受けるべきである。経過・評価によっては10年待たずに給付が打ち切られる可能性もある。また、事業はこれだけではないし、定期的に新たな事業が出てくるものである。そして次項の補助額も問題である。

6の点について。補助額

・「グローバル人材育成支援」年間補助金額(最大5年間)

タイプA:全学推進型

入学定員 ※大学院の入学定員を含まない

 2千人以上 2.6億円

 1千人~2千人未満 2.2億円

 5百人~1千人未満 1.8億円

 5百人未満 1.4億円

タイプB:特色型 1.2億円

・「スーパーグローバル大学創成支援」年間補助金額(最大10年)

タイプA:トップ型 4.2億(最大5億円)

タイプB:グローバル牽引型 1.72億円(最大3億~2億円)

 額についてはいろいろな見方ができると思うが、先に述べた通り、無いよりは良いに決まっているが巨額ではない。ここで先に挙げたブログ記事の記述を引用したい。

 タイプAで4億2000万円×10件、タイプBでは1億7200万円×20件。安倍内閣が徹底して教育再生、グローバル化しようとしてるとは思えないほどの少額です。年間4億ちょいで何ができるのかというと、大学教授の平均年収は約1100万円(参考)なのでこの場合約40人雇えます。トップクラスの教員を確保するのにはもっと必要でしょう。“世界の教育マーケット”[*1]で活躍する人材ならなおさらです。当然、教員を雇うだけではグローバルな環境になるわけもないので、不十分でしょう。

 平成26年度国家・一般会計予算は約96兆円。そのうち文教及び科学振興費は5兆7000億円です(参考)。ちなみに東大の年間の予算は約2400億で、そのうち教育研究経費は約860億円です(参考)。4億2000万円というと、その約0.5%です。世帯年収400万円の家庭だったら大体年間2000円[*2]です。小学生の一ヶ月のお小遣い程度です。世界の大学の予算についてはこちらやこちらも参考になります。

(「[News] スーパーグローバル大学とは何か 〜選考基準、疑問点、今後の展望〜」、個別指導講師の学習教材レビュー、2014年9月30日)

*1 「世界の教育マーケット」。文科省が公募要領の「事業の背景・目的」の中で使っている表現。この記事の著者は単に「世界の高等教育における」と言えばいいと批判している。

*2 400万円の0.5%は2万円だが少ないことに変わりはない。

 本気でグローバル化(←この概念の捉え方が曖昧なのであるが)に取り組むには少額であることがわかるだろう。これらの補助金とは別で私立大学が毎年受けている補助金を参考として挙げておく。

*参考

図5.(平成25年度の私学助成額)

平成25年度私立大学等経常費補助金

「平成25年度私立大学等経常費補助金 学校別交付額一覧 大学(www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h25a1.pdf)」

7~11の点について。

 上に挙げた「スーパーグローバル大学創成支援」申請一覧の各大学の「構想名」に目を通して欲しい。なんとも上辺だけの、いかにも浅そうな文言が並んでいると感じないだろうか。それぞれの申請書がPDFとして載っていて、内容を詳しく見るべきだが、この一覧は見ているこっちを空しい気持ちにさせる。日本の大学は「グローバル」化推進のためにこぞってこんなことをしている/(文科省に)させられているのか、と。ここでは個別の大学名を挙げて批判はしたくないが構想名で言えば、例えば「アジアのグローバル・スタンダードを世界標準へ」って...少年BOYみたいになってはいないか。前半が「アジアの」と形容されているということであろうが、であればそのスタンダードはグローバルではないだろう。アジアの標準を世界標準へと言えばいい。ただ、そこに潜在する意識について考えれば内容的に問題大有りだ。明治時代じゃあるまいし。あ、これ採択されてるのね。いろんな意味で内容をよく見る必要があると言えよう。

 今は大学単位でも研究者単位でも、計画書を書くのに忙殺されて肝心の研究に割く時間が奪われる傾向にある時代であり、こうしたことも上手くこなす能力が求められる。日本より大学間格差が小さく激しい学歴主義的感覚が希薄と言われているドイツでも、大学補助金の重点配分が行われるようになり、各大学の教授たちが独創的な研究計画を書くのに必死である。リーダーともなればその忙しさはとてつもないと聞く。ただこちらは純粋にそれぞれの研究プロジェクトでの勝負であり、「スーパーグローバル」とか何とかと銘打ったものではまったくない。大学単位での科研費競争といったところであろうか。ドイツでは2007年より、一番上のカテゴリーでプロジェクトが採択された大学は「エリート大学(Eliteuniversität)」と呼ばれるようになっている。こちらも地方の小さい大学などからは格差を助長するものとして批判が出ている。

 文科省が推進する事業はこれら2つのみではないし、定期的に新たな事業が生み出される。採択されなかった大学は次こそはと努力を重ねていくだろう。見る側もなるべく大きな視点で見なければいけない。まして「スーパーグローバル」などという言葉だけに踊らされてはいけないのだ。

*補足

 冒頭で事業の是非については論じないと言ったが、気に留めるべき点のいくつかについて補足的に記す。

• 「グローバル人材育成支援」では入学定員に応じて補助金額を決めるようだが、「※大学院の入学定員を含まない」とある。含んでいいではないか。なぜ含まないのか。本当の意味での底上げには、学士・修士・博士課程、ポスドク、教員すべてを含む包括的な取り組みが重要ではないか。

• 「スーパーグローバル大学創成支援」の「目的」には「本事業は、「大学改革」と「国際化」を断行し、国際通用性、ひいては国際競争力の強化に取り組む大学の教育環境の整備支援を目的としています」とある。これは「大学」を「改革」することが前面に出ていて人を見ていない印象を与える。そして、タイプA:トップ型の「対象」には「世界大学ランキングトップ100を目指す力のある、世界レベルの教育研究を行うトップ大学を対象とします」とある。この個所から、ランキング上位に入ることが目的であることが明らかに。グローバル化はそこに必要な要素のひとつだろうが、事業の名称の割にそれが目標になっていない。若者が留学等をしようがしまいが、「大学」がランキング上位に入ることが目的であり、人材はその駒である潜在意識が透けて見える。そしてタイプB:グローバル化牽引型の「対象」には「これまでの実績を基に更に先導的試行に挑戦し、我が国の社会のグローバル化を牽引する大学を対象とします」とある。ここでも前面に出るのは「大学」。「グローバル人材育成支援」が個々の「取組」を対象とするのとは違って「大学」を対象とする。

• だから、上に挙げた図4.の一覧を眺めると、「何々する○○大学」というように自身の大学名を入れている構想名がとても多い。「うちの大学は」という意識が恥ずかし気もなく前面に出ているのを感じる。表面的な、あまりに表面的なネーミングがずらりと並んでいる。その中で慶應義塾大学の「『実学(サイエンス)』によって地球社会の持続可能性を高める」という構想名はとても好感が持てる。奇を衒った表現もなく、不必要に主題・副題に分けたりもしていない。自分たちの大学が発展すればいいとか知名度を上げたいとか、ランキング上位に入るのだ、という気持ちからというよりは世界に対する純粋な問題意識から出てきたととれる構想名だ。これが本当にグローバルな感覚だろう。他のは...、大概見ての通りである。

• ただそれも、こういう形態で公募が出た以上はそれに向かって応募するのだからある程度はやむを得ないのだろう。恐らく問題の本質は事業自体の方にある。「目的」と「対象」のところで述べた通りである。

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