ベートーヴェン『フィデリオ』 ウィーン国立歌劇場 2015年6月9日
Fidelio
Ludwig van Beethoven
Adam Fischer | Dirigent
Otto Schenk | Regie
Günther Schneider-Siemssen | Bühne
Leo Bei | Kostüme
Chorleitung | Thomas Lang
Jochen Schmeckenbecher | Don Pizarro
Robert Dean Smith | Florestan
Nina Stemme | Leonore
Lars Woldt | Rocco
Sebastian Holecek | Don Fernando
Annika Gerhards | Marzelline
Norbert Ernst | Jaquino
Dritan Luca | 1. Gefangener
Ion Tibrea | 2. Gefangener
座席 立ち見Balkon rechts、後半1階立ち見4列目
(http://www.wiener-staatsoper.at/Content.Node/home/spielplan/Spielplandetail.php?eventid=1401050)
今日で上演回数228回というプロダクションで、完全なるレパートリー上演。舞台は見ての通りのノーマルさ。特に『フィデリオ』を観たいわけではなかったが、ニーナ・ステンメを観ておきたいというのと、劇中に間奏曲としてレオノーレ序曲が演奏されるのを体験しに。
全体にゆるい演奏だ。響きにしまりがない。オケやる気なさすぎ。レオノーレ序曲第3番もひどい演奏。指揮者は元気よくあれこれ動いていたが滑稽だ。オケは別にたいして反応してないよ。全休止のあとに振り始めて、オケが棒のテンポよりゆっくり弾き始めるや否や指揮がオケに合わせてしまうこともあった。それって...。まあ、安全運転ってことで。
その日の上演を無事に終了させること(だけ)を目標としているような指揮者(と私は理解している)に何か突き抜けるような高いものを求めてもしかたないか。現場を知る職人的指揮者としての力量はあるのだろうし、それはそれでいいのだが、出て来る音楽は退屈過ぎる。4月の『パルジファル』はフィッシャーだったが、余計なことをしないという(きわめて消極的な)意味では良かったと言えるかもしれない。とりあえず無難に上演を遂行する。
今日はフィッシャーの指揮云々もそうだが、それ以前にオケにやる気がない。それでも拍手喝采。アダム・フィッシャーにも盛大な拍手とブラヴォー。あぁ、普段のウィーンだ。
歌手について簡単に感じたことだけ。スミスは声量がなさすぎた。最後には一瞬声が裏返りそうな気配も(ちなみに昨年秋の『タンホイザー』ではひっくりかえってしまっていた)。
『ジークフリート』で鳥の声を歌っていたアニカ・ゲルハルツがマルツェリーネ。今後さらに活躍していきそうだ。
ニーナ・ステンメは上手いと思ったが(今日のところは)それほど特別には感じなかった。
『ニーベルングの指環』を観た直後なのでなおさら感じるが、それにしてもつまらないオペラだ。作曲者がベートーヴェンでなければこんなに頻繁に上演されないと思う。しかも、ベートーヴェン唯一の、ということで確実に得をしている。他に選択肢がないから上演回数が多くなる。つまらないにも程があるので、今後の人生であと一回も観なくても後悔しないと今日思った(演奏が退屈だったせいもあると思うが)。こういう「労」作をみるとベートーヴェンはいわゆる天才ではないなぁと改めて思う。
(http://www.wiener-staatsoper.at/Content.Node/home/spielplan/Spielplandetail.php?eventid=1401050)
レオノーレ序曲第3番と第2番について前からずっと思っていることがある。演奏会で単独で取り上げられるのはたいていレオノーレ序曲第3番。しかし、第2番の方が良いのではないか。第3番は、第2番の粗削りな部分を整えてしまったところがいかにも凡庸で滑稽にすら聴こえる。