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フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

トーンキュンストラー管弦楽団/アルブレヒト・マイアー/佐渡裕 ウィーン楽友協会 2015年10月11日

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Tonkünstler-Orchester Niederösterreich
Yutaka Sado, Dirigent
Albrecht Mayer, Oboe

Richard Strauss
Suite aus der Oper „Der Rosenkavalier“, AV 145
Konzert für Oboe und kleines Orchester D-Dur, AV 144
-------- Pause ----------
Gabriel Urbain Fauré
Pelléas und Mélisande. Suite für Orchester, op. 80
Albert Roussel
Bacchus et Ariane. Ballettsuite Nr. 2, op. 43


15:30-
座席 1階1列左10番

 佐渡裕の音楽監督就任演奏会に続き2回目のトーンキュンストラー管弦楽団の演奏会。独奏者はベルリン・フィルのオーボエ奏者アルブレヒト・マイアー。今日はもともと19:30からアーノンクール/コンツェントゥス・ムジクスのベートーヴェン第7番、8番の演奏会だったがアーノンクール体調不良のため4月に延期となった。延期になったことで同じ日に連続していく必要がなくなり、(連続しても行ったと思うが)延期のお知らせのメールを受け取った後に心置きなく今日の演奏会のチケットを購入。普段は演奏会で最前列を選ぶことはまずないが、マイアーが出演(だからこそいつもの好きな席で聴きたくもあるのだが)、かつ安いから一度くらい楽友協会の最前列に座ってみようかと思い今回は最前列真ん中で聴くことにした*1。マイアーは、ベルリンではベルリン・フィルの演奏会で彼が乗っていれば聴いていて、最後にその音を聴いたのはこの前の5月、ベルリン・フィルのウィーン楽友協会での演奏会。ソリストとしては初めて。
http://jutta-philharmoniki.hatenablog.com/entry/2015/10/05/074726ツ ----------
*1 トーンキュンストラー管弦楽団のカテゴリーだと最前3列(=Cercle)はカテゴリー6で、(立ち見を除き下から)2番目に安い席。確かに最前列は異常に近いのだが、近すぎるとは言えその下のカテゴリーはもはや舞台裏の席(サントリーでいうP席)なのでかなり下に設定されていることがわかる(1, 2, 3, 4, 5, 6, Olgelbalkon, Stehplatz)。他の団体の演奏会でもたいてい2番目か3番目のカテゴリーに分けられている。日本ではほぼ常にS席なのとは大きな違いだ。

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はい、近いです。(休憩中)

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指揮者はほぼ真上って感じ。(休憩中)


 R. シュトラウスの『ばらの騎士』組曲。指揮者が動くたび席も揺れる。佐渡はけっこう大柄だし、しかもわりとぴょんぴょん跳ねるので揺れる揺れる(まあこんなに揺れるのは近いからっていうのと、半分(以上)は楽友協会がぼろいから)。

 R. シュトラウスオーボエ協奏曲。マイアー登場。演奏中に楽器が自分の方に向いて、まっすぐ奥まで楽器の中が見えるくらい。 f:id:jutta_a_m:20151012072641j:plain:w500
協奏曲、マイアーはここで演奏。(休憩中)

 マイアー、芯があり艶もありつつしなやかな音。技術も卓越していて、難しいそうなフレーズも難しさを感じさせず安定している。楽譜に吹かされているところは微塵もなく完全に我が物にしている。こちらはただひたすら集中して聴き入るのみ。

 演奏後、拍手の中何回か登場と退場を繰り返し、また佐渡と一緒に出てきて拍手が鳴りやむと聴衆に話し始めた。

「この素晴らしいホールで演奏できることは演奏者にとって大きな喜びです」
(拍手)(佐渡の手を取って)
「そして素晴らしいパートナーを得ることも」
(佐渡照れる。拍手)
「もし皆さんに、休憩前に2分と45秒の時間があればアンコールを演奏したいと思います」
(拍手)
「曲はヨハン・ゼバスティアン・バッハで、シンフォニア、こうタイトルが付けられているものです、「墓穴に片足をかけて(Ich stehe mit einem Fuß im Grabe)」*2。私自身がそうって意味ではないですが」
(笑いと拍手)

 演奏。これがもう感動。静謐の中に漂う気品と温もり。神々しささえある。心が洗われるよう。ホール全体が静まりかえっていた。最後の音が鳴りやんでもマイアーはじっとしている。誰も拍手をしない、静寂。楽器を離した瞬間大きな拍手。もう何とも言えないような感動で、休憩中もずっと高揚感が残ったまま。
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*2 カンタータ第156番。全く関係ないが、マイアーの話すドイツ語は端正で聴いていて気持ち良い。

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Albrecht Mayer © Matt Dine


 後半はフランスの作曲家の音楽。フォーレの『ペレアスとメリザンド』組曲とアルベール・ルーセル(Albert Roussel, 1869-1937)の『バッカスとアリアーヌ』組曲。初めて聴くが、そのルーセルが良かった。派手に盛り上がるところ、抒情的な部分など多彩で聴いていて面白い。フランス音楽ならではの管弦楽法における多彩さもある(それを味わうならそれこそいつも座る辺りの座席の方が良かったが)。オケの演奏としてもこの曲が一番気合が入っていたし、指揮者の佐渡も頻出する変拍子を巧みにこなし自信をもって振っているのがよく伝わってきた。就任演奏会の時も聴衆の反応は良かったが、今日はより盛り上がっていたように思う。最後の音が鳴りやんだときはけっこう熱狂気味で。就任演奏会の時の記事で、今日の演奏会のテーマ"Sado dirigiert Strauss"はマイアーほどの名手が来るなら"Mayer spielt Strauss"にしたほうが良いんじゃない?などと書いたが、終わってみれば"Sado dirigiert Roussel"という感じ。実際にこれだと知名度が低くて宣伝効果としてインパクトがなさすぎるだろうが、演奏にはインパクトがあった(どちらにせよもとのやつは焦点の当て方がずれている気がする)。

 就任演奏会ではハイドン、ベートーヴェン(ソリストキャンセル前はモーツァルト)、ブラームスとドイツ・オーストリアの作曲家を並べ、今日は前半にR. シュトラウスの2作品を置きつつ、後半は佐渡が得意としているとされるフランス音楽からフォーレとルーセル。プログラムの組み方がなかなか良いと思った。プログラムだけでなく、ぶれずに同じ方向を向いた良い演奏をしていると思うし、コンマスとソロの多かったヴィオラトップと握手する様からは信頼も見て取れた。今後もこのまま良い活動を続けていってほしいと思う。ファンってわけでもないし、好きな指揮者ってわけでもないけれど。


 余談。アルブレヒト・マイアーとこうやって自身が就任したオケの定期演奏会で共演できるのも少なからず良い関係があるからかな、と思う。舞台上での上記のような発言は珍しいし、本当に思っていなければしない。2011年にベルリン・フィルに客演し、その後呼ばれていないが、こうやって良い関係で共演している今に繋がっているのであろうか、などと勝手に思ったりした。少なくとも客演した時に(まあまあ)良い印象を与えていたのかなとこれまた勝手に思う(パユもインタビュー映像を見たときわりと好意的な印象を持っていた感じがした)。

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