フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

ウィーン・フィル/クラリノッツ(3オッテンザーマー)/ネルソンス ウィーン楽友協会 2016年1月12日

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Wiener Philharmoniker
Andrís Nelsons, Dirigent
the clarinotts:
Andreas Ottensamer
Daniel Ottensamer
Ernst Ottensamer

Joseph Haydn
Symphonie B-Dur, Hob. I:102
Iván Eröd
Tripelkonzert für drei Klarinetten und Orchester, op. 92
-------- Pause ----------
Ludwig van Beethoven
Symphonie Nr. 3 Es-Dur, op. 55, „Eroica“


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座席 立ち見

 一昨日と今日の2回公演。指揮者はネルソンス。2010年にベルリン・フィルハーモニーで初めてその指揮に接した時から、なんであんな需要があるのかと思っている指揮者の一人。ネルソンスの指揮で演奏したことのある知り合いの奏者に練習ではどうなのか聞いたことがあるが、面白いは面白いらしい。テンションは高いと。あれをずっとやってられるのはある意味それも能力かも、と。なるほどと、需要の高さは主にそこから来ているのだろうかと勝手に思っている。

 カメラが設置されていたが中継されていたか。

 ハイドンの第102番。ハイドンの交響曲の中でも好きな方の102番。たしか一回聴いたことあるなと思って振り返ると12年前、読響/テイト指揮で池袋芸劇で聴いた。ウィーン・フィルの音が美しい。昨日のシュターツカペレ・ドレスデンも良かったが、やはりウィーン・フィルはウィーン・フィルで美しい。ネルソンスが指揮、曲がシンプルなだけにちょっとしたところがあちこち気になる。それと指揮(動き)が邪魔くさい。前に聴いた時もあれでオケがずれていて。でも、2流3流があれこれしてしまっている感じとはいえよくこんな自由奔放に好きにやってるよなと思った。そして自分としてはこういうあれこれ好きなようにする指揮者は好きなんだけどなぁと思いつつ。

 エレート作曲、3つのクラリネットのための三重協奏曲。初演。ブダペスト生まれの、1月2日に80歳となった作曲家イヴァン・エレート(1936-)が2014年9月と2015年3月に集中的に作曲した曲。ウィーン・フィルのクラリネット奏者エルンスト・オッテンザーマーが、自身と息子のダニエル(ウィーン・フィルクラリネット奏者)とアンドレアス(ベルリン・フィルクラリネット奏者)のための作品を作ってほしいという依頼に応じて作曲された。当初はクラリネット、チェロ、ピアノのための室内楽曲として考えられていたが、ウィーン・フィルも作品に興味を示し3つのクラリネットとオーケストラのための協奏曲として成立した。全3楽章。楽しめる。神秘的な第2楽章も気に入った。編成も大きくないし、今後各地の演奏会で取り上げられるようになるのではないか。演奏終了後、舞台にエレートも登場した。
 アンコールは"Copacabana"をクラリネット3本用にアレンジした曲。会場大盛り上がり。

 ベートーヴェン「英雄」。ネルソンス指揮の行き当たりばったり感がよく出ていた。演奏が終わる時、聴衆がどう反応するのかと思っていた。今日一番面白かったのは「英雄」の後の拍手の弱さ。今まで楽友協会、いやウィーンで聴いた拍手の中でも一番小さかったと思う。しかも2回しか呼び戻されなかった。聴衆の低調な反応。

 反応としては私も冷めていたが、それでも見方を改めることにした。そのうち、たまにだとしても、ものすごく面白くて素晴らしい演奏を聴かせてくれる可能性のある指揮者、と思えば思える気がした。第4楽章終わりの方、全休止に続いて主題を回想するところ。木管のアンサンブルに続いて出てきた弦にうっとり。盛り上がって山を作ると思いきや、一度弦をさっと抑えたところ。ネルソンス会心の一撃だった。そういう場面がなかったとしても、よくウィーン・フィルにこんな付き合わせてるなと考えてみたらそれはそれですごいと言える気がしてきた。めちゃくちゃなのに、いやめちゃくちゃだからそれに付き合わせてるのは余計すごいと言える。ティーレマンだってもっと抑えてと指揮台から手振りで指示しても反応してもらえなかったりするのだから(ウィーン・フィル/ブロンフマン/ティーレマン ウィーン楽友協会 2015年12月13日)。

とは言っても、今後も指揮者がネルソンスだから行くってことはないと思うが。


一昨日1月10日の演奏をORFで聴くことができる(1週間だから1月17日(日)まで!)。

Ö1 Programm - Musik, So., 10.01.2016
前半→"11:03 Matinee live" ハイドン:交響曲第102番、エレート:クラリネット三重協奏曲
後半→"12:24 Matinee live" ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
2016年1月10日、ウィーン楽友協会

アンコールも入っている(少しせかせかしている気がする。今日の方が良かったと思う)。拍手も入っている。一昨日も拍手が小さかったことがよくわかる。

それにしても録音が/は良い。良過ぎ。

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