フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

ドニゼッティ『劇場の都合不都合』 フォルクスオーパー 2016年2月18日

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Viva la Mamma
Gaetano Donizetti

Libretto von Gaetano Donizetti nach den Komödien Le convenienze teatrali und Le inconvenienze teatrali von Antonio Sografi

Nach dem von Vito Frazzi eingerichteten Original für die deutsche Bühne bearbeitet von Horst Goerges und Karlheinz Gutheim. Für die Volksoper adaptiert von Alexander Kuchinka

Regie | Rolando Villazón
Bühnenbild | Friedrich Despalmes
Kostüme | Susanne Hubrich
Choreographie | Vesna Orlic
Bewegungscoaching | Nola Rae
Choreinstudierung | Holger Kristen
Dirigent | Wolfram-Maria Märtig

Corilla (eigentlich Cornelia), die Primadonna | Anja-Nina Bahrmann
Stefano (eigentlich Stephan), Corillas Ehemann | Ben Connor
Luisa, die zweite Sängerin | Julia Koci
Agata, ihre Mutter | Martin Winkler
Dorothea, die Mezzosopranistin | Elvira Soukop
Vladimir, der erste Tenor | JunHo You
Der Dirigent | Yasushi Hirano
Der Regisseur | Daniel Ohlenschläger
Der Theaterdirektor | Andreas Mitschke


座席 1階右8列2番

 ドニゼッティのあまり上演されないオペラ。初演は1827年11月21日ナポリ(Teatro Nuovo di Napoli)。レアな作品を観てみようということと、ロランド・ビリャソン演出ということで観ようかと行くことにした。このプロダクションのプレミエは昨年1月。
 台本はアントーニオ・ソグラーフィ(Antonio Sografi)による一幕の『劇場の都合』と『劇場の不都合』に基づいてドニゼッティ自身が制作。それがここではさらにドイツの舞台で上演用にアレンジされている。元のドイツ出身のグリエルモというテノール歌手がロシア出身のテノール歌手に変わっている、など。上演言語はドイツ語、劇中劇のイタリアオペラはイタリア語。ドイツ語圏の劇場でイタリアオペラを上演する状況に合っている。

あらすじ
第1幕。(この演出では)オーストリアの小さな地方劇場で、プレミエを3週間後に控えたイタリアオペラ『ロムルスとエルシリア』の稽古中。主役のソプラノ、コリッラは演出に不満、ロシア出身のテノール、ウラディミールはもう一つアリアを歌いたいのだがイタリア語の発音に難がある、もう一人のソプラノ、ルイーザとメゾソプラノのドロテアがいるが、どちらがロンドを歌うのか、など問題だらけ。それでも指揮者と演出家は新制作の成功を確信している。
 ルイーザの母アガタが現れる。皆に煙たがられながらも、自分の娘ルイーザがロンドを歌うべきと言い張る。ロンドを歌わせてもらえないドロテアは劇場を去ってしまう。まだ女王役が決まっていない。舞台に立ちたいアガタとバリトンのシュテファンが立候補する。性別も声域も違うのに...。大混乱のリハーサルのあと、ウラディミールも劇場を去ってしまう。支配人はアガタを女王役とし、ロムルスを歌うはずだったウラディミールの代役としてバリトンのシュテファンを起用することにする。そこに劇上への補助金が出ない可能性があるとの知らせ。皆騒ぎ立て、前払いを要求する。

第2幕。プレミエ2日前。舞台美術、衣装などもすでに揃い、リハーサルが行われている。アガタはギャラを釣り上げようとするが追い出されそうになると、一度だけでもいいから歌わせてほしいと頼み込む。公演が行われるよう自分のアクセサリー類を担保にすることを約束までする。こうして女王を歌うことになる。補助金が打ち切られることになるも、アガタのおかげで無事上演することができる。マンマ・アガタ万歳。ヴィヴァ・ラ・マンマ。

上演
 いつものように上演中の撮影禁止、携帯電話の電源をお切りくださいというアナウンスがドイツ語、英語でなされる。すると続いてビリャソンによるスペイン語のアナウンスが流された笑

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(休憩中)


 オペラのプレミエ上演までの劇場での稽古のごたごたが目の前で繰り広げられるが、個々の場面でいろいろ笑えるのだが、それに頼り過ぎというか。進行がややもたついている印象を受ける。わりと退屈。それと、演出に気が向きがちだが、皆声量が足りない。声が出ていたのはコリッラ役のソプラノ(とアガタ役のバリトン)くらいか。

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© Volksoper Wien

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舞台美術担当フリードリヒ・デスパルメスとロランド・ビリャソン。演出コンセプトのプレゼン(2014年3月11日)にて。 © Volksoper Wien

 始まりの方で劇中劇の『ロムルスとエルシリア』の演出に不満を漏らす歌手たちに「これは現代の帝国主義の象徴だ」と演出家が得意そうに語る。演出コンセプトはスター・ウォーズ。アガタが剣を振り回すところで、"ich bin dein Vater"の台詞も。

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© Volksoper Wien

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© Volksoper Wien
第2幕、女王役のアガタによってめちゃくちゃに歌われるアリアはロッシーニの『オテロ』からのパロディー。手前に見える指揮者は舞台上の「指揮者」。


 最後のリハーサル、ルイーザが歌うところでモーツァルトやプッチーニなどごちゃまぜで引用されていた。

 休憩中に少し話した隣の男性は退屈そうに。客席全体では結構げらげら笑っている人もいた。面白いは面白かったが、場面場面で小さな笑いを取っているだけで全体を貫く芯がないというか。おふざけ具合で言ってもやるならもっとやってほしい。突っ走り具合が足りない。

 上演として満足度が低い主な理由の一つは歌唱が低調だったこと(まあそれも含め「地方劇場」と言えば間違ってはいないが...)。オケも含めドニゼッティの音楽の面白味をあまり味わうことができなかった。

(このDer Standardの評はぼろくそ言ってる笑→ Das Imperium singt zurück, grauenhaft grell - Volksoper Wien - derStandard.at › Kultur。読んでて笑える)

 まあまあ、歌手のビリャソンが初めて演出した(してみた)んだから、大して面白くなくてもまあいいじゃないかって感じだが。そんな簡単に良い演出はできないねってことで。ベルリンのコーミッシェ・オーパーとかでやったら超面白いんだろうな、とか思いつつ帰宅。

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休憩中


 【オペラ『ロムルスとエルシリア』について】プログラム冊子で触れられていた。内容はもちろん違うが、『ロムルスとエルシリア』という名のオペラは実際にあったと。 台本Pietro Metastasio、作曲Johann Adolph Hasse。1765年インスブルック、レオポルト大公(1747-1792, のちに神聖ローマ皇帝レオポルト2世)とスペイン王カルロス3世の王女マリア・ルドヴィカとの結婚式の際に上演された。

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"Romulus und Ersilia" (Originaltitel: "Romolo ed Ersilia"), 1765 Innsbruck. (Wikipedia "Romolo ed Ersilia"(de.))

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