フィルハルモニ記

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イル・ジャルディーノ・アルモニコ/アントニーニ/リッカルド・ノヴァーロ 「ハイドン2032」 楽友協会 2016年3月11日

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Il Giardino Armonico
Giovanni Antonini, Dirigent
Riccardo Novaro, Bariton

"Il Distratto"
Joseph Haydn
Symphonie E-Dur, Hob. I:12
Symphonie C-Dur, Hob. I:60, „Il Distratto”
-------- Pause ----------
Domenico Cimarosa
„Il maestro di cappella“
Joseph Haydn
Symphonie D-Dur, Hob. I:70


Zyklus: Haydn 2032 / 2, Auf.Takt / 3

Bemerkungen: Nicola Alaimo mußte seine Teilnahme an dem Konzert absagen. Dankenswerterweise erklärte sich Riccardo Novaro bereit, den Bariton-Part zu übernehmen.

4/4/2/3/1

座席 2階右31番

イル・ジャルディーノ・アルモニコ/アントニーニによる「ハイドン2032」

 アントニーニとイル・ジャルディーノ・アルモニコは「ハイドン2032」を推進中。ハイドン生誕300周年を迎える2032年までにハイドンのすべての交響曲を演奏し、録音していくというプロジェクトで、2014年11月に第1弾、2015年5月に第2弾のCDが発売された。

HMVのページへ↓
第1弾 ハイドン:交響曲第1番、第39番、第49番『受難』、他


第2弾 ハイドン:交響曲第22番『哲学者』、第46番、第47番、他



第3弾に当たるであろうプログラムでの演奏会はウィーンでは昨年11月に行われた
ハイドン『無人島』序曲、交響曲第4番ニ長調、第42番ニ長調、第64番イ長調「時の移ろい」、演奏会アリア:ハイドン『ひとり物思いに沈み』、モーツァルト『私は行く、でもどこへ』


第4弾、今日のプログラム

 今日の演奏会で演奏されるのは第4弾として録音するプログラム(のはず)。プログラムは、前回の時点で公表されていた交響曲第3番、60番、65番から、第12番、60番、70番に変更されていた。また当初歌う予定だったバリトン歌手ニコラ・アライモに代わりリッカルド・ノヴァーロ。

 前半。1曲目は交響曲第12番ホ長調(1763)。1759年に最初の交響曲を書いてから5年以内には約25曲の交響曲を書いていたハイドン。そのうち「9つが"古い"3楽章型急緩急、8つが"モダンな"急緩メヌエット急、4つが変形した(バロックの教会ソナタに影響を受けた)4楽章緩急メヌエット急に対応している」(プログラム冊子解説(Hartmut Krones))。1963年に書かれた第12番はこのうち3楽章タイプを代表している。オーボエ2、ファゴット1、ホルン2。ホ長調の響きが心地よい(ハイドンのホ長調の交響曲は29番とこの12番の2曲)。途中プログラム冊子を見て、ハイドンはこれ書いた時に31歳くらいかぁ、と思ったり。

 第60番ハ長調「うかつ者」(1774)はジャン=フランソワ・ルニャール(Jean-François Regnard)の戯曲„Le Distrait“ (1697、"Der Zerstreute")の劇音楽として書いたものが元になっている。全6楽章。オーボエ2、ファゴット1、ホルン2、トランペット2、ティンパニ。序曲として構想されたとされる第1楽章とそれに続く5つの楽章。個性的で特徴のある作品。。フォルテとピアノ、長調と短調の頻繁な入れ替わり、(「うかつ者」らしくあえて)洗練されていない印象を与えるメロディーを用いた強い対比。第3楽章、ハ短調のトリオの冒頭の音型はモーツァルトのピアノ協奏曲第24番(1786)を思い起こさせる。5楽章の途中でコンミスの合図で弦楽器奏者たちが勝手にチューニングを始める。アントニーニはクールにおいおいと手で合図を出して仕切り直す。

 今日のプログラム冊子の解説から少し。1770年頃からカール・フィリップ・エマヌエル・バッハの影響のもと始まったハイドンの「シュトゥルム・ウント・ドランク」期。楽章の表題や歌曲の引用あるいは書面の記述内容といった資料がはっきりと示しているのは、

「この頃のハイドンがまだ決してロマン派の音楽美学によって高く掲げられた”絶対”音楽の代表者ではなく、むしろ(モーツァルトとベートーヴェンもそうであったように)バロックの”言語性”に内容的・象徴的意味において深く結びついていた」(プログラム冊子解説(Hartmut Krones))

ことだと。そして「内容」に関連して最も機知に富み、それゆえこの時期を代表する作品のひとつがこの交響曲第60番ハ長調だと(プログラム冊子解説(Hartmut Krones))。

 休憩。今日もいつも通り10分前くらいに来たのだがいつになく混んでいる。階段も詰まって進まない。大ホールとブラームスホールの両方で演奏会が19:30で重なっている。何の演奏会かと思ったらウィーン交響楽団とエリーザベト・レオンスカヤ。休憩もほぼ同じタイミング(こちらの方がやや遅かった)。大ホールの様子をチラ見。うん、ピアノが置いてある。後半が終わった後もホールから出るとこちらの大ホールも拍手の最中だった。

 後半。チマローザ(Domenico Cimarosa, 1749-1801)の『宮廷楽長』(1793)。これが面白い。原語の"Il maestro di cappella"はドイツ語だと"Der Kapellmeister"(カペルマイスター)。宮廷楽長役のバスバリトンがオーケストラに指示を出しながら歌うのだが...笑。歌ったのはイタリア出身のバリトン、リッカルド・ノヴァーロ。おどけた歌唱と演技が面白く、とても楽しませてくれた。

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Riccardo Novaro © Yannick Coupannec


 最後はまたハイドンで交響曲第70番ニ長調(1779)。フルート1、オーボエ2、ファゴット1、ホルン2、トランペット2、ティンパニ。所々の響きに同じニ長調のモーツァルトのハフナー・セレナード/交響曲を思い出したり。終楽章のフガートが興味深い。終わり方があっけない。

 ハイドンの交響曲第60番とチマローザの『宮廷楽長』を前後半に置くのは良いプログラムだなあ。うかつ者つながりと言うことか笑。聴く機会のとても少ない作品。それぞれ単体でも次に聴くのはいつだろうか。これらをイル・ジャルディーノ・アルモニコ/アントニーニ指揮で、そして約600席の楽友協会ブラームスホールで聴くのは贅沢だなぁ。

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休憩中


 今シーズンのイル・ジャルディーノ・アルモニコ/アントニーニの「ハイドン2032」の2公演とも終了。楽しみました。

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