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フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

ヴィクトリア・ムローヴァ 2010年6月18日 コンツェルトハウス・ベルリン

演奏会

2010年6月18日(金) Viktoria Mullova

Konzerthausorchester Berlin

Lothar Zagrosek

Béla Bartók „Der wunderbare Manderin“ Suite nach der Balletmusik op. 19

 (バルトーク バレエ音楽より組曲『中国の不思議な役人』)

Jean Sibelius Konzert für Violine und Orchester d-Moll op. 47

 (シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ニ短調)

Brahms Sinfonie Nr. 1 c-Moll op. 68

 (ブラームス 交響曲第1番 ハ短調)

12,10,8,6,4(コンバス4か5か…)

14,12,10,7,6(なぜかチェロ一人少ない)

アンコール、バッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ1番1

2階正面右2列6番

 良い席だ。数日前のチェックでは今日金曜日の公演のチケットがけっこう少なくなってたからきっちり1時間前に到着するように気をつけたけど、行ってみたら列なんかなくて一人待つだけで即購入。人気的にはムターとは比較にならないな。このブロックは1列目と2列目の足元がそれ以降の列よりも広い。この間はもうちょっと狭かった。

 休憩中にサインしますと張り紙があちこちに。CDもテーブルに広げて売っていた。どれも面白そうなのばかり。ここのプログラムはあまり良くないし、好きなムローヴァだからCDにサインしてもらおうと思った。アントニーニとのヴィヴァルディか、ダントーネとのバッハか、ベートーヴェンの3番&クロイツェルソナタか、バッハ無伴奏か。ヴィヴァルディのあのCDは前から存在は知っていた。ダントーネとも録音してたのか。この間実際に聴いたばかりだからこの二人の組み合わせにも興味あり。しかしムローヴァのクロイツェルは激烈に面白そう。2010年、今年発売されたばかりじゃん、興味津津。でもどこかで出たと聞いていた新しいバッハ無伴奏の録音が捨てがたいし、無難にやはりこの中でどれかと言われればこれを聴かないといけないだろうとも思う。そして決定打は、これは2枚組だから1枚当たりの値段的にも得じゃんということでバッハ無伴奏の新録音に決定。買ったら、迷った挙句やっと無伴奏に決めた私に販売員のおじさんが「良い選択だ、今日のアンコールはそれだよ」って言ってくれた。そしてそれは本当だった。

 今日2曲プロだと勘違いしてて、始まる直前に、ブラームスでもシベリウスでも使うはずのない打楽器群を目にして、まさかと思いプログラムを見たら(買ったならちゃんとあらかじめ見とけってことだが)最初はバルトーク。昨日もバルトークとブラームス聴いたな。勘違いしてる間ムローヴァに向けて集中力を高めていたけど無駄だった。そしてバルトークの曲も、もういいよ、って感じで集中力低下。今日の目玉のムローヴァの前にこんな大編成でこんな大音量聴かされることにすこしストレス。この選曲は良くなかったと思う。

 やっとムローヴァ。あぁ。ドアが開いた瞬間姿が見えてまず感動。衣装、ムローヴァああいうの好きだよね。赤いワンピース?に黒いぴちっとしたズボン、そしてサンダル?みたいな。鳴り響くと、あぁムローヴァの音だ…。残念なのがオーケストラが、指揮者が、よりによってぐちゃぐちゃだったこと。テンポがぐらぐら、合ってんだかなんだか。ていうかたまにムローヴァの方も合わせる気あんのかっていうところがあったけど。どれだけずれようと今日は、この曲の時はムローヴァしか見てなかったけど。ムローヴァ、その方向一点に集中。この曲、シベリウスのヴァイオリン協奏曲のこんな演奏は聴いたことない!っていうのが一番強い印象。初めて聴くような聴かせ方。一言で言うと、バッハを弾いてるみたい。1楽章の途中ソロで弾いてる時はその間バッハを聴いてるみたいだった。音には甘さは無い。透徹した響き。どうだろう、技術的に、音程が不安定なこともあった。もっと正確さがあると思っていたけど。オーケストラの下手さに調子が上がらなかったか。でもそこまで言う程のものではなかったけど。それにしてもあの聴かせ方。私はこうすると。奇を衒うためではなく、彼女として純粋に理解する上でそうなったと。だから不思議と、この解釈・演奏自体は初めて聴くような響きで真新しくて、意外性のあるものだけど、でも自然に聴こえるという。ムローヴァの演奏してる姿が自然に映った。彼女はこういう演奏をする演奏家なんだと。ムターでもハーンでもない。一番特徴的なのは重音の聴かせ方。ボウイングも変わってるなと思ったところがたまにあった。重音のバランス、内声の聴かせ方、この曲はこんな風にも聴こえるのかという。ロマン派風にただメロディーラインをなぞるような演奏に慣れていると特に奇異に感じるかもしれない。そして間の取り方。ルバートがけっこう強烈だった。重音の鳴らせ方もルバートも、彼女が近年集中的にバッハ、またはその時代の音楽に取り組んできた結果生まれたものだろう。各楽章間で拍手が。オケがあのざまにもかかわらず。

 そこまで人気が、あるにはあるだろうけど、ムターのようなダントツな人気は無い彼女の演奏会に来るというのは相当純粋に音楽好きな人の集まりなんだろうな。だからきっと今日の会場には比較的好意的な人が多かったのだろう。実際隣に座ってたドイツ人に、「ムローヴァは自分の一番好きなヴァイオリン奏者なんですよ」と言ったらその人もそうだと。終わったら大きな拍手。アンコールはバッハ。良いね。これの方が一人で弾いてるからオケの邪魔もないしよく味わえたかも。そして彼女も自分のいる場所に戻ったかのような感じでなんとなく音の深いところで落ち着きがあったように感じられた。別にそれまでが落ち着きなかったというわけではないけど、深いところで。アンコールで一曲だけだけどムローヴァのバッハが聴けて良かった。

 休憩中にさっき買ったCDにサインしてもらった。多分ドイツ語は話さなそうだったな。それにしてもまだまだ若いな。年齢はそこそこいってるはずだけど。

 後半のブラームスはもうどうでもよかったのだけどまあ気楽に聴きました。ムローヴァの音の印象が薄れるから聴かない方がいいかななんてことも思ったけどそれももったいないので。そして残念な?ことにブラームスの方がオケだけでやれるからかシベリウスよりもはるかに上手く演奏していたという。それでもそれ自体はそんなに良くなかったんだけど。弦と管のバランスも悪いし、管の音色も良くない。この指揮者は良くないですな。協奏曲の時にその柔軟性のなさを露呈。その時の状況で素早く合わせていく機敏性、即応性がない。ちんたら。あの時の、ハーンと来日した時のBBCオケはとても上手だった。

 いずれにせよ、今日は念願のムローヴァを実際に聴くことができて良かった。サインも貰えて。凄い近くで見ることもできて。不思議な気分だった。

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ヴィクトリア・ムローヴァ

Bach: 6 Solo Sonatas & Partitas

CD(2CDs), Import

Onyx, 2009/5

―バッハのヴァイオリン無伴奏演奏史における最高到達地点―


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