フィルハルモニ記

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Goethes Gedanken über Musik(2)構成・目次紹介

Goehtes Gedanken über Musik, 1985, Insel Verlag. 『ゲーテの音楽思想』

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 なかなか紹介できていませんが今日は本書の構成(目次)について簡単に。

1. 音楽についての個人的な経験(初期、イタリア紀行(1788)まで、ヴァイマールでの音楽体験、音楽の楽しみへの要求、「精神的な音楽の喜び」に満足すること、それでも時折「音の渦の中で魅了されること」、「新しい」音楽と音楽家について、音楽一般に対する彼の関係について)

2. 音楽一般について(音楽の意味、神聖な音楽と「世俗的」な音楽、音楽における「悪魔的」なものについて、リズムと音楽、音楽と音楽家、他の芸術との関係における音楽、「真の音楽はただ耳のためだけにある」、音楽において「認められる法則的なもの」について、器楽音楽について、音楽愛好家の最高に社交的な領域、音楽を聴くこと)

3. 音楽の作用(音楽の慰める力、音楽の形成する力)

4. 歌曲と歌(人間の声、歌一般について、民謡について、歌曲における語-音-関係に関して、歌曲の形成と現われに関して、朗らかで社交的な歌曲への好み、そして精神的な歌曲への好み)

5. 音楽劇(音楽劇一般について、オペラ台本について、いくつかの台本について、音楽劇における歌詞と音楽)

6. 重要な音楽について(ヘンデル、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン)

7. 音楽理論的なもの(「すべての新しい音楽は2つの方法によって扱われる」、短調についての議論、ゲーテの「音論」)


 目次からもわかるようにかなり広範なテーマで、ゲーテのいろいろな著作、手紙などから興味深い言葉が集められています。ヘンデル、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンたちを高く評価していたことは有名ですが、最後の「音論(Tonlehre)」なるものを研究していたのは驚きです。この本を読んで初めて知りました。ということは全集の中のどこかに探せばあるのか。。。

 以下は目次より手前(P. 1)にある、(おそらく)編集者による文章。 

 ゲーテは疑いもなく目の人、完全な目の人であった。「目は他のいかなるものよりもまず、それでもって私が世界を把握した器官である」、とゲーテは『詩と真実』の中で述べている。人生は観ることへの喜びの証に満ちている。しかし、そのことはゲーテの音楽に対する関係という点にかかわるときどのように成り立っているのであろうか。この選集の読者は、ゲーテの作品、手紙、日記、会話にみられる音楽についての思索の豊富さに驚くかもしれない。これらの資料はここで主題別に構成され、それらが音楽の世界におけるゲーテの感覚と思考の並はずれた広がりを明らかにしてくれる。文章には詳細にコメントされた資料が添えられる。例えば、彼の音楽仲間、助言者、同僚たちの肖像画や、そしてまた彼の音楽環境、音楽生活、音楽理解を物語る絵やファクシミリである。

 ゲーテは、彼の音楽思想がはっきりさせているように、音楽に関してすでにほとんど近代的な知的な立場を発展させていた。というのは音楽が、彼の感覚的な特性と並んで、精神的な美学的な社会的なそして自然科学的な現象として彼を魅了したからである。しかし、決して見逃してはならないことは、彼には音楽に関するすべての思索はひとつの真面目な代用品にすぎなかったということである。しばしば彼は述べている、音楽は演奏され歌われ直接に聴かれなければならないし、それらについて話すことすべては「悪しきおしゃべり」である、と。これは、ゲーテの音楽への愛の告白のようである。ゲーテは音楽家ではなかったが、彼にとって音楽は魂の欲求として、思考の欲求として、命の欲求として欲したものだったのである。

  たしかにゲーテは目の人なんでしょうね。まず『色彩論』がすぐに思い浮かびますし。これも相当の力作です。いつも思いますが、あれだけの文学作品を残しておいてよくもこれほどの物を、しかも自然科学の分野で、作り上げるものだと、まさに驚嘆です。

 

Goethes Gedanken ueber Musik

Goethes Gedanken ueber Musik

 

 

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