フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

パーヴォ・ヤルヴィ/アンデルジェフスキ/ウィーン交響楽団 ウィーン・コンツェルトハウス 2015年4月26日

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Wiener Symphoniker

Piotr Anderszewski, Klavier

Paavo Järvi, Dirigent

Wolfgang Amadeus Mozart

Konzert für Klavier und Orchester C-Dur

K 503 (1786)

***

Anton Bruckner

Symphonie Nr. 2 c-moll

(Fassung von 1877) (1871-1872/1877)

アンコール

チークの3つのハンガリー民謡


4, 6, 8, 10, 12 (並びは1, Vc, Va, 2、Cbはチェロの後ろ)

8, 10, 12, 14, 15 (Cdは一番後ろ=金管の後ろ)

座席 3階8列3番、後半左ロージェ5番1列5番

2回公演の1日目

 日曜日の11時開演の演奏会。路面電車で1本なのだが目前で逃がし、地下鉄で向かう。この場合最寄り駅から楽友協会を横切ることになるのだが、楽友協会に向かっていく人たちがちらほら。それを見て、そういえば今日は同じ11時開演でウィーン・フィル/ムーティの演奏会があったことを思い出す。シューベルトの大ハ長調だったなぁ、でもそれは11月にバレンボイム/ウィーン・フィルで聴いたなぁ(→「ウィーン・フィル バレンボイム指揮 2014年11月1日 ウィーン楽友協会」)、などと思いつつ楽友協会を通り過ぎ、ウィーン・コンツェルトハウスへ歩いていく。着いてみるとガラガラとはいかないが空席が結構目立つ。たしかに買う時に火曜日の夕方の方が売れていた気はする。

 パーヴォ・ヤルヴィ指揮の演奏会は初めて。ドイチェ・カンマーフィルとの録音を聴けば誰でも、面白いな、この指揮者の演奏会行ってみたいな、と思う指揮者だろう。私も聴きたいと思ってはいたが、それでもどうしても聴きたいと言うほどではなかった。ウィーンに来てから、ドイチェ・カンマーフィルに乗っている友人にある期間定期的に会う機会があり、このオケの音楽づくり、練習風景、演奏会ツアーなどのいろいろな話を聴いて(昨年末のブラームス交響曲でのアジア・ツアー、日本公演でも熱狂だったとの話もこの友人から聴いた)、今度機会があったら行こうと思っていたところにさっそく(オケは違うが)パーヴォ・ヤルヴィ指揮のこの演奏会を見つけ、行くことにした。

 プログラムの前半、モーツァルトのピアノ協奏曲第25番は、この指揮者とピアニストが2月にN響と共演した時にも取り上げていたのをチケットを買った後に他のいくつかのブログを見て知った。同じものを持ってきたということで、コンビとして回数を重ねているだろうからと期待していた通りの良い演奏だった。アンデルジェフスキは全体として、楽譜をただ弾いているだけと感じさせるような個所が無い。派手な踏み外しはしないが、独特の響かせ方をする。他の作品もいろいろ聴いてみたいと思えるピアニストだ。ピアノとオケの呼吸もしっかり合っていた。モーツァルトのピアノ協奏曲第25番は、第20番以降の傑作ピアノ協奏曲群の中で一番地味であろうし、実演に接する機会が他の曲より限られるだけに、良い演奏でこの曲を聴くことができて嬉しい。

 後半はブルックナー交響曲第2番。これはどのくらい聴く機会があるだろうか。日本国内でこの曲が演奏されたのは最近ではいつだろうか。日本で過去数年にどこかの演奏会で取り上げられたことがあるだろうか。日本にいてこのブルックナー交響曲第2番を演奏会で聴いたことがある人は相当少ないのではないかと思う。今後に関して言えば、来年、2016年にバレンボイム/シュターツカペレ・ベルリンがブルックナー交響曲ツィクルスを日本で敢行するので、第2番を聴く機会が、日本における演奏会で何年振りか知らないが、ひとつ発生する(最近発表された、バレンボイム/シュターツカペレ・ベルリンによるブルックナー交響曲全曲ツィクルス、2016年2月、東京。また別にちゃんと書こうと思っているのだが、これは行ける人は行ける範囲でぜひ行ってほしいと思う)。

 私は、今回もそうだが、ブルックナー交響曲第2番はたまたま聴く機会に巡り合っていて、前回この曲を聴いたのは、ベルリン・フィルハーモニーでのブロムシュテット指揮/DSO(ベルリン・ドイツ交響楽団)の演奏会(→「ベルリン・ドイツ交響楽団(Deutsches Symphonie-Orchester Berlin) ブロムシュテット指揮 2010年1月7日&9日 ベルリンフィルハーモニー」)。普段は同じ公演に2回行くことはないのだが、この時はあまりに気に入ったので2回聴きに行った。この時からブルックナーの交響曲第2番は好きな曲となった。

 

 今日の演奏はテンポに相当めりはりをつけているが、見事にはまっているので変に恣意的な印象は受けないし、むしろ変化に富むこの曲の多様な面を見せてくれたように思う。そしてこれは、パーヴォ・ヤルヴィのウィーン交響楽団への客演なわけだが、よくここまで意思統一の度合いを高めたなという印象。オケ全体の向いている方向がしっかり揃っていた。ただ、第3楽章でコーダに入る前に(この版では)休止になるところでヴァイオリンの誰かが音を出してしまい、全体に非常に完成度が高かっただけに残念。指揮者としてこうやりたい、という理想がしっかりあって、そしてそれを実行するための統率力があるのが聴いていて、観ていてひしひし伝わってきた。そして改めてこの曲の魅力を感じさせられた。先週、ウィーン交響楽団/ティチアーティ指揮のブルックナー第4番がひどかったと書いたが(→「ウィーン交響楽団/ティチアーティ/クリスティアン・テツラフ ウィーン・コンツェルトハウス 2015年4月21日」)、まさに雲泥の差である。

 日曜日の11時から昼過ぎまで良い演奏を聴いて、外に出ると天気も良く風も気持ち良く、とても良い気分。毎回このくらい充実した公演に行きたい。次に行く演奏会はちょうど1週間後の日曜日。ウィーン楽友協会でラトル/ベルリン・フィル、ブルックナー交響曲第7番。このところブルックナーが続く。

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 今日の演奏会は思えば、構成としては先に書いたバレンボイム/シュターツカペレ・ベルリンによる2016年2月のブルックナー交響曲全曲ツィクルスのモーツァルトピアノ協奏曲とブルックナー交響曲と同じプログラムの組み方。それで、ベルリン国立(州立)歌劇場管弦楽団、バレンボイム指揮、協奏曲もバレンボイム弾き振りとなればやはりぜひ行きたいところだ。

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