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フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

モーツァルト『ルーチョ・シッラ』 アン・デア・ウィーン劇場 2016年4月27日

オペラ

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Lucio Silla
Dramma per musica in drei Akten (1772)
Musik von Wolfgang Amadeus Mozart
Libretto von Giovanni de Gamerra

Konzertante Aufführung in italienischer Sprache
Eine Produktion des Théâtre des Champs-Elysées

Musikalische Leitung | Laurence Equilbey
Spielleitung | Rita Cosentino
Lucio Silla | Alessandro Liberatore
Giunia | Olga Pudova
Cecilio | Franco Fagioli
Cinna | Chiara Skerath
Celia | Ilse Eerens
Orchester | Insula Orchestra
Chor | Arnold Schoenberg Chor (Ltg. Erwin Ortner)

2,Cembalo,Fg,Fl,Ob,Hr,Tr
 3,8,4,7,Tim

休憩:第1幕後に1回

立ち見右

 毎回楽しみなアン・デア・ウィーン劇場の演奏会形式シリーズも今日の公演が今シーズン最後。

 モーツァルトの『ルーチョ・シッラ』。KVは135。あのディヴェルトメントのひとつ前。『ミトリダーテ』に続く2作目のオペラ・セリア。1772年の12月26日にミラノのTeatro Regio Ducal(現スカラ座)で初演された。これは17歳になる1ヵ月前、まだ16歳の時。作品は大きな成功を収めることはなく、26回上演された後1世紀半に渡って忘れ去られていた。20世紀後半になってようやく再び上演されるようになった。

 登場人物は5人。ローマの執政官シッラ(T)、追放された元老院議員チェチーリオ(S(カストラート))、チェチーリオの婚約者ジュニア(S)、シッラの妹チェリア(S)、チェチーリオの友人・チェチーリアの恋人チンナ(S)(アウディフィオ(T)は無し)。ソプラノ4人にテノール1人。シッラはローマの軍人、政治家のルキウス・コルネリウス・スッラ・フェリクス(Cornelius Lucius Sulla Felix、紀元前138-78)。舞台は共和制ローマ、紀元前80年頃。この前ここで観たヘンデル『アルミニオ』の90年前くらい。ヘンデル(1713)や、パスクアーレ・アンフォッシ(Pasquale Anfossi)(1774)、ヨハン・クリスティアン・バッハ(1776)も同じ題名・テーマでオペラを書いたとのこと。

【あらすじ】
第1幕。ジュニアに想いを寄せるスッラに追放されたチェチーリオが密かにローマに戻り、友人でスッラの敵対者チンナと落ち合う。スッラはジュニアに、チェチーリオが死んだと信じさせ、妹の助けを借りてジュニアに強く言い寄っていた。チンナは、ジュニアが父(ガイウス・)マリウスの墓を毎日訪れていることを伝えそこで逢うように勧める。チンナはスッラ殺害を目論んでいる。スッラはジュニアと無理やりにでも結婚式を挙げたがっているがジュニアは強く拒否する。チェチーリオとジュニアは墓の前で再会する。
第2幕。シッラはそれでもジュニアに結婚を強いることを決める。シッラは妹のチェリアにチンナと結婚することを認める。チェリアは喜ぶ。チェチーリオはマリウスの墓の前でシッラ殺害を決心する。自分の手でシッラを殺害したいチンナはそれを諫める。チンナの前にチェリアが現れ愛を告白する。チンナはジュニアに対し、見かけ上結婚してもらい新婚の床でシッラを殺害しようと提案するが断られる。チンナはやはり自身の手で殺害することを決める。シッラは元老院でジュニアとの結婚式を挙げる許可を得ようとするが、ジュニアは結婚するくらいなら死を選ぶと言って拒む。ジュニアがナイフで自害しようをするところにチェチーリオとチンナが現れる。スッラを殺害しようとしたのだが試みは失敗に終わる。チンナは狡猾にも、シッラをチェチーリオから守るためだと言い張り、チェチーリオだけが牢屋に連れて行かれる。
第3幕。チンナはもしチェリアがシッラをジュニアを諦め、チェチーリオを解放するよう説得できたらチェリアと結婚すると約束する。ジュニアが牢屋に現れ別れを惜しむ。処刑は目前に迫っている。チンナとチェリアはシッラの説得を試みる。もしチェチーリオを処刑すればローマの怒りを買うことになるだろうと。シッラは皆を許す。チェチーリオは解放されジュニアとの結婚を許される。チンナは追放されたチェチーリオを内密にローマに呼び戻したことを白状。それも許す。妹のチェリアを妻とさせる。すべての追放者に恩赦を与え、職を辞する。寛容が称えられ幕。


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初演時のリブレット表紙。1773年の四旬節とある。(Wikimedia Commons)

 演奏会形式ではあるが、halbszenisch、半分は上演する形だった。普段の演奏会形式だと舞台に譜面台が置いてあって、皆楽譜を持って登場し見ながら歌うが、今日は譜面台も楽譜も無し。簡素な演出によるオペラ上演という感じだった。今日は字幕上演なのだが、今日の字幕は切り替わるタイミングがずれていたりずっと何も表示されなかったりでめちゃくちゃ。まあ仕方ないか。幸い筋は単純だし。字幕付き上演ということでいつも演奏会形式シリーズでプログラム冊子に載っている原語/ドイツ語対訳は無し。

 そうそう、今日アンケートを実施していた。建物に入ったらスタッフに声をかけられ、アンケートを実施していて記入してくれたらプログラム冊子をもらえると。おぉ、書く書く。内容は、どのくらいの頻度でオペラを観に行きますか?演奏会に行きますか?最近観たオペラは何ですか?とか。

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休憩中。暗くて見えにくいがついたてが5つ並んでいる。舞台セットは先週プレミエを迎えたR. シュトラウス『カプリッチオ』のもの。

 5つのついたてが舞台上に。S I L L Aとチョークで書いてある。冒頭のチェチーリオとチンナの場面ではチンナがアリアを歌いながらシッラの文字に斜線を引き、それぞれの文字の上のスペースににM O R T Eと書き加える。そのほか登場人物がその後ろに隠れたりするのに使われた。舞台後方には椅子が並べられ合唱団員が座る。

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休憩中


オーケストラはインスラ・オーケストラ。2012年に指揮者ロランス・エキルベイによって設立された古楽器団体。演奏としては、悪くはないかもしれないがちょっと平凡な印象。今日はやはり歌手陣。すべての配役に良い歌手が揃って素晴らしかった。第1幕終了直後、隣の男性が私に一言、grandios。

 その歌手陣にあって特に素晴らしかったのはなんと言ってもフランコ・ファジョーリ。もう上手過ぎて。生まれた時からカウンターテノールだったかのような。いろんなタイプがいるとしても、今まで聴いたカウンターテノールで一番。通りの良い声で声量もあり、音程も安定している。高音だけでなく深い低音も響かせる。圧巻。

 チンナ役のキアラ・スケラートも冒頭のアリアから存在感を見せてくれた。このオペラひとつ目のアリアだが、いきなりの素晴らしい歌唱にその後の上演の出来に対する期待が一気に高まった。

 アレッサンドロ・リベラトーレは迫力がすごい。一人声量が飛び抜けていた。プログラムを見るとヴェルディなどを頻繁に歌っている。バランスで言えば周りと釣り合いは取れていないのだが、声量不足よりははるかに良いし、威厳のある声でキャラクターを表現するのも上手いと思った。

 妹チェリア役のイルゼ・エーレンスも堅実な歌いぶりで良い歌唱だった。

 ジュニア役のオルガ・プドヴァもきれいな声に声量も十分で表現力もある。

 モーツァルトの書いた音楽も面白い。もちろん完成度で言えば後年の『フィガロの結婚』や『コジ・ファン・トゥッテ』などとは比べるべくもないが、粗削りなところも興味深く聴いた。フィガロは一日にしてならず。このオペラ最初のアリアはチンナが歌うものだが、最初から長い長い。続くチェチーリオのアリアも長い。いわゆるモーツァルト節もふんだんに聴かれるが、そうでないところも多い。(それにしても歌手に無茶をやらす笑)

 今日は充実の歌手陣の歌唱に大満足。


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終演後

*今日の公演の前にパリで行われた公演を視聴できる

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ちなみに同じ時間帯に楽友協会ではバレンボイム&アルゲリッチの演奏会が行われていた。そっちも良い演奏会だったろうな。幸い2人の共演(と連弾)は昨年9月に一度聴いた。

昨年9月シュターツカペレ・ベルリンとバレンボイムの楽友協会での演奏会。アルゲリッチがソリストでベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番、その時のアンコールで2人並んで弾いた。

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