フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

コンツェントゥス・ムジクス/シュテファン・ゴットフリート モーツァルト 楽友協会 2016年2月28日

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Concentus Musicus Wien
Stefan Gottfried
, Dirigent
Karina Gauvin, Sopran
Florian Boesch, Bassbariton

Wolfgang Amadeus Mozart
Symphonie Es-Dur, KV 184 (Ouverture)
Divertimento D-Dur, KV 251
Porgi amor qualche ristoro. Cavatina der Gräfin aus der Oper „Die Hochzeit des Figaro“, KV 492
E Susanna non vien! - Dove sono. Rezitativ und Arie der Gräfin aus dem 3. Akt der Oper „Die Hochzeit des Figaro”, KV 492
-------- Pause ----------
Madamina! Il catalogo è questo. Arie des Leporello aus der Oper „Don Giovanni“, KV 527
Finch han’ dal vino. Arie des Don Giovanni aus der Oper „Don Giovanni“, KV 527
Symphonie D-Dur, KV 504, „Prager“

8,6,4,3,2

座席 1階左Parterre-Loge9 2列2番

 昨年12月にアーノンクールが引退を発表した後、コンサートマスターのエーリヒ・ヘーバルトと第1ヴァイオリンのアンドレア・ビショフとともにシュテファン・ゴットフリートがコンツェントゥス・ムジクスの音楽監督を引き継いだ。1月のアン・デア・ウィーン劇場での『フィデリオ 1806』の演奏はゴットフリートの指揮で行われた。

 シュテファン・ゴットフリート(Stefan Gottfried)はウィーン出身、ウィーン音大でチェンバロ、ピアノ、作曲、音楽教授法を、バーゼル・スコラ・カントルム(1933年設立の古楽を専門とするバーゼルの音楽教育・研究機関。ジョルディ・サヴァールなどがいる)で通奏低音と時代ごとの鍵盤楽器について学んだほか、ウィーンの私立音大でホルンをウィーン工科大学では数学を学んだ。アーノンクールとは2004年以降定期的に仕事をしてきた。ゴットフリートは現在ウィーン音大で教授を務めながら(ピアノ)、歴史的な上演・演奏実践についての講演活動を行っている。指揮者デビューは2015年3月(アン・デア・ウィーン劇場/ウィーン室内オペラ(Wiener Kammeroper)、フローリアン・レオポルト・ガスマン『鳥を捕まえる人』("Gli Uccellatori"))。コンツェントゥス・ムジクスの演奏会では初の指揮。それと指揮者として楽友協会ホールデビュー。

Stefan Gottfried © Robert Newald
Stefan Gottfried © Robert Newald

Stefan Gottfried und Nikolaus Harnoncourt © Werner Kmetitsch
Stefan Gottfried und Nikolaus Harnoncourt © Werner Kmetitsch
2014年、ダ・ポンテ三部作の練習期間中に、アーノンクールのザンクト・ゲオルゲンの自宅で。

 今日はオール・モーツァルト。ん、10日ほど前にもフライブルク・バロックオーケストラとゲルハーヘルの歌唱でオール・モーツァルトのプログラムを聴いたばかりだな。フライブルク・バロックオーケストラにコンツェントゥス・ムジクスとは、うん、贅沢だ。

 前半、交響曲第26番変ホ長調(KV 184)、ディヴェルティメント第11番ニ長調(KV 251)と『フィガロの結婚』から伯爵夫人の2曲。今更だがチューニングの音が低い。KV 184は短い。KV 251は「ハフナー・セレナーデ」(KV 250)からすぐ作曲された曲。同様に、とまではいかないが盛りだくさんだ。歌うのはカナダ出身のソプラノ、カリーナ・ガウヴィン。ここ最近聴くソプラノみんな体格が良いな...とか楽友協会ホールは残響が豊かな分聴き取りにくいなとか思いつつ聴く。

 後半、『ドン・ジョヴァンニ』から2曲と交響曲第38番ニ長調「プラハ」(KV 504)。歌うのはオーストリア出身のバリトン、フローリアン・ベシュ(Florian Boesch)。コンツェントゥス・ムジクスとは何度も共演している。私が聴いたのは以下。


Florian Boesch © Lukas Beck
Florian Boesch © Lukas Beck

 ベシュは動きを交えてとても気さくに歌ってくれた。レポレッロの「カタログの歌」ではいきなり胸ポケットからスマホを取り出して、画面をこちらに向ける。画面に女性の顔写真が笑 画面にタッチしていろんな女性の顔写真をどんどんスクロールして見せる。会場から笑い。細かい仕草も面白い。

 指揮者のゴットフリートとベシュが拍手を受けた後に舞台から出て行き、指揮者だけが戻って来る。さて、最後の「プラハ」交響曲へ、と思いきやなにやら静かに始まる違う曲が。するとベシュと前半に歌ったガウヴィンが出てきた。誘惑つながり?で『コジ・ファン・トゥッテ』フィオルディリージとフェルランドの2重唱だ。プログラムには載っておらずアンコールなのだがアンコールっぽくなく始めるところにユーモアを感じる。ベシュは自信ありげに口説きにかかる。ガウヴィンが応えて歌いだすと、(なかなか落とせないなぁと言わんばかりに)指揮者に近づき腕時計を確認するなど動きが面白い。聴衆も大いに楽しんで大きな拍手。

 「プラハ」は第1楽章の提示部を繰り返すか(繰り返さないでほしい)、と思っていたら繰り返さなかった。第3楽章再現部は繰り返したがそちらは演奏し分け方で納得。第1楽章の再現部でフルートが他パートとやたらかみ合わせが悪かった部分以外は全編完成度の高い出来。「プラハ」交響曲はそんなに好きではないのだが魅力を感じさせてくれる演奏だった。

 全体にわずかながら若さというか、音楽の流れが柔らかくなったというか、そんな気がする。コンツェントゥス・ムジクスの今後が気になるが今日の演奏会は良い演奏会だった。今後も「ウィーン楽友協会と言えばウィーン・フィルもいいが、コンツェントゥス・ムジクスをじっくり聴くことこそ大きな喜び」と思わせるような演奏を披露していってほしい。

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休憩中

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