フィルハルモニ記

ドイツ文化・思想の人がオペラ・コンサートなどの感想を中心に書いているブログ

ブルックナー・オルガン ザンクト・フローリアン修道院教会 2015年9月9日

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Stift St. Florian
"HÖRERLEBNIS BRUCKNERORGEL"


Bernardo Pasquini (1637-1710)
Toccata
Johann Sebastian Bach (1685-1750)
"Ich ruf zu dir, Her Jesu Christ" Orgelchoral BWV 639
Anton Bruckner (1824-1896)
Praeludium in C ("Perger") (1884)
Klaus Sonnleitner (*1970)
Improvisation, über ein Thema von Anton Bruckner
Felix-Alexandre Guilmant (1837-1911)
Aus der Sonate Nr. 1 d-Moll op. 42: Final


ブルックナー・オルガン体験

 ブルックナー・オルガン。ブルックナーが弾いていたオルガン。修道院を離れた後、ウィーンにいた時も、ブルックナーはしばしばこのオルガンを弾きに戻ってきた。オルガン真下、地下にはブルックナーの棺が置かれている。


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演奏前

 1770年から1774年にスロヴェニア出身のフランツ・クサーヴァー・クリスマン(Franz Xaver Krismann)によって作られた。当初は74の音栓(ストップ)と5230のパイプを持ち、1886年まで国内最大のオルガンだった。幾度かの拡張により103の音栓と7386のパイプを持つこのオルガンは現在でもオーストリア最大級のオルガンのひとつ。ウィーンに移ってからもしばしば弾きに戻ってくるほどブルックナーに愛されたこのオルガンは、1930年よりブルックナー・オルガンと呼ばれるようになった。ザンクト・フローリアン修道院について、修道院とブルックナーについて詳しくはひとつ前の記事を参照されたい。


 演奏は全部で25分ほど。ブルックナー・オルガンの響きを聴けるだけでも嬉しいので曲は何でもいいとさえ言えるのだが、やはりブルックナー・オルガンでブルックナーの曲を聴いてみたい。1曲だけあった。前奏曲ハ長調(1884)。あぁ、ブルックナーだ。プログラムを見なくともこれがブルックナーに違いないとすぐにわかる。とても短い曲だが何となく落ち着いた気分になった。つづくブルックナーの主題による即興曲もブルックナーの世界を楽しませてくれた。こちらはもうちょっと彼の交響曲風の響きが聴こえてきた。

 演奏を聴いた後は修道院のガイドツアーに参加した。ブルックナーの棺などを見学した後、バスでリンツ中央駅に戻り、ウィーンに帰った。(この日のリンツ観光とザンクト・フローリアン修道院訪問については「リンツ日帰り【前半】」&「リンツ日帰り【後半】」をご覧いただきたい)



オルガンで閉じて、オルガンで開いたシーズンの幕

 振り返ると先シーズンの最後に聴いたのもオルガンだった。最後、と思って行ったのはその前のフォルクス・オーパーでの『コジ・ファン・トゥッテ』だったのだが、翌月になんとなく出かけたついでにシュテファン寺院の近くにある聖ペテロ教会でオルガン演奏を聴いたのが2014/15シーズンの最後となった。その日は偶然も偶然、バッハの命日で全曲バッハだった。


 そして2015/16シーズン、幕開けはこれまたオルガンだった。それもブルックナー・オルガン。バッハの命日にバッハのオルガン曲で閉じた幕が、新シーズンにブルックナーゆかりのザンクト・フローリアン修道院教会のブルックナー・オルガンで開いた。日本にいたらきっと新国の『ラインの黄金』で幕開けしていただろうと思う。二期会の『ダナエの愛』かも。どちらにせよ、皆さんの2015/16シーズンの幕開けも良いものになりますように。

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